軽度認知障害の前方視的・後方視的研究

文献情報

文献番号
200400309A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度認知障害の前方視的・後方視的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
村山 繁雄(東京都老人総合研究所 老化臨床神経科学研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 有馬 邦正(国立精神・神経センター武蔵病院中央検査部)
  • 金丸 和富(東京都老人医療センター神経内科)
  • 石井 賢二(東京都老人総合研究所附属診療所)
  • 栗崎 博司(独立行政法人国立病院機構東京病院神経内科)
  • 小尾 智一(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター神経内科)
  • 松田 博史(埼玉医科大学付属病院核医学診療科)
  • 本吉 慶史(独立行政法人国立病院機構下志津病院神経内科)
  • 加藤 貴行(東京都老人医療センターリハビリテーション科)
  • 坂田 増弘(国立大学法人東京大学医学部附属病院精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
13,245,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
記憶障害型軽度認知障害(MCI)該当症例を、高齢者ブレインバンクより抽出し、その病理学的背景を明らかにした(後方視的研究)。それを元にクリティカルパスを作成、背景病理毎に介入することで、痴呆予防をより効率的に行うことを試みた(前方視的研究)。
研究方法
後方視的研究として、1995年以後のDNA保存連続剖検1,468例を免疫組織化学的に、変性型老化構造物の半定量化を行い、脳血管障害変化と合わせ、データベース化した。MCI該当例を、二人の神経内科専門医が独立して病歴より抽出、背景病理を明らかにした。前方視的研究として、物忘れ外来受診者に対し、介護者より記憶障害の訴えを確認、MMSE 24/30以上、頭部CTで粗大病変なし、リバーミィード行動記憶検査(RBMT) 1.5SD以下の例を、文書同意の上前方視的に追求した。MRI容量スキャン、脳血流シンチ統計画像、髄液バイオマーカー(タウ、リン酸化タウ、アミロイドベータ)、16fluor-deoxy glucose(FDG)PETを出行い、中枢性コリンエステラーゼ阻害剤による治療を行った。
結果と考察
後方視的研究として、MCI該当例は、アポE遺伝子多型決定済み1417例中220例(15.5%)に認められ、男女比、死亡時年齢、脳重、ApoE遺伝子多型の全てで、正常と痴呆群の中間に位置した。背景病理では、アルツハイマー型MCIが15.5%と最も頻度的に高く、血管障害型MCIは12.3%、嗜銀顆粒型MCI、レヴィー小体型MCI、神経原線維変化優位型MCIの順であった。前方視的研究として、RBMTとWMS-Rとの相関をみたが、特に遅延再生課題と最も高い相関を示し、有用性が確認された。画像では、FDG-PETを経時的に撮像することが、感度・特異度とも最高であった。髄液アミロイドβ蛋白値は脳実質アミロイド沈着と、リン酸化タウとタウは脳実質タウ沈着と強い相関を示すことが、最終病理所見との対応で明らかとなった。一方MCIレベルの症例では、髄液リン酸化タウとMMSEは強い正相関を示し、最も有用なマーカーと考えられた。
結論
MCIは、アルツハイマー病前駆状態を中核とするが、レヴィー小体型痴呆、高齢者タウオパチーの他、血管障害性痴呆前駆状態を含み、鑑別診断には、リバーミィード行動記憶検査、髄液バイオマーカー、FDG-PETが有用である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400309B
報告書区分
総合
研究課題名
軽度認知障害の前方視的・後方視的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
村山 繁雄(東京都老人総合研究所 老化臨床神経科学研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 有馬邦正(国立精神・神経センター武蔵病院臨床検査部)
  • 金丸和富(東京都老人医療センター神経内科)
  • 石井賢二(東京都老人総合研究所附属診療所)
  • 栗崎博司(独立行政法人国立病院機構東京病院神経内科)
  • 小尾 智一(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター神経内科)
  • 松田 博史(埼玉医科大学付属病院核医学診療科)
  • 本吉 慶史(独立行政法人国立病院機構下志津病院神経内科)
  • 加藤 貴行(東京都老人医療センターリハビリテーション科)
  • 坂田 増弘(国立大学法人東京大学医学部附属病院精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軽度認知障害(MCI)の生物学的背景を、連続剖検例と病歴を対応させる方法で明らかにした上で、臨床例に背景病理毎に的確に介入することで、痴呆予防をより有効に行うことを試みた。
研究方法
後方視的研究として、高齢者ブレインバンク内、1995年以後のDNA保存連続剖検1,468例を、免疫組織化学的に検討の上、変性型老化病理を半定量化し、脳血管障害による変化と合わせ、データベース化した。MCI該当例は、二人の神経内科専門医が独立して病歴より抽出し、病理所見と対応させた。前方視的研究としては、後方視的研究をふまえ、物忘れ外来受診者に対し、MMSE 24/30以上、頭部CTで粗大病変なく、リバーミィード行動記憶検査(RBMT)1.5SD以下の例をMCIとし、文書同意の上前方視的に追求した。MRI容量スキャン、脳血流シンチ統計画像、髄液バイオマーカー(タウ、リン酸化タウ、アミロイドベータ蛋白)を必要項目とし、FDG-PETをできる限り行い、中枢性コリンエステラーゼ阻害剤と記憶のリハビリによる介入を行った。前方視的追求患者が不慮の転帰をとった時、後方視的研究に組み込むことで、結合を企てた。
結果と考察
後方視的研究として、MCI該当例は、1417例中220例(15.5%)に認められ、男女比、死亡時年齢、脳重、ApoE遺伝子多型プロフィールの全てで、正常群と痴呆群の中間に位置した。背景病理では、アルツハイマー型、血管障害型、嗜銀顆粒型、レヴィー小体型、神経原線維変化優位型の順で、痴呆症例における頻度と一致した。前方視的研究として、RBMTはWMS-R遅延再生課題と高い相関を示した。画像では、容量測定MRI画像とSPECT機能統計画像の組合せが有用だが、FDG-PETを経時的に撮像することが、感度・特異度とも最高であった。最終病理所見との対応から、髄液アミロイドベータ蛋白値は脳実質アミロイド沈着と、リン酸化タウとタウ値は脳実質タウ沈着と強い相関を示すことが明らかとなり、アルツハイマー型MCIの診断に有用であった。現在200例を前方視的に追求し、背景病理別介入の是非を検討中である。
結論
MCIは、アルツハイマー病前駆状態を中核とするが、レヴィー小体型痴呆、高齢者タウオパチー、血管障害性痴呆前駆状態を含み、鑑別診断には、MMSEとRBMT、髄液バイオマーカー、FDG-PETが有用であり、より的確な介入が可能となると思われる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-