高齢者炎症性・難治性肺疾患における病態分子機序の解明および新治療法開発の戦略的展開

文献情報

文献番号
200400308A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者炎症性・難治性肺疾患における病態分子機序の解明および新治療法開発の戦略的展開
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長瀬 隆英(東京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 裕基(東京大学大学院医学系研究科)
  • 石井 聡(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
19,964,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老年者における重症肺感染症(特に嚥下性肺炎)、ARDS、特発性間質性肺炎、気管支喘息などは、炎症を主体とする病態であり、治療の困難さや発症頻度から、社会的にも極めて重大な疾患群である。しかし、その発症機構については十分な検討がなされていない。本研究では、近年、その生理学的意義が注目されている 1) 脂質性メディエ-タ-、2) 抗菌ペプチド、および3)CGRPファミリーなどその他のメディエ-タ-に着目し、老年者炎症性肺疾患発症との関連を探索する。
研究方法
本研究では、1) 脂質性メディエ-タ-、2) 抗菌ペプチド、および3)CGRPファミリーに着目し、老年者炎症性肺疾患発症との関連を探索した。
1)脂質性メディエ-タ-:脂質性メディエ-タ-の炎症性肺疾患発症機序における重要性について検討した。2)抗菌ペプチド: 加齢による innate immunity への影響を検討するため、加齢マウスを用いて beta defensin の発現を検討した。3)CGRPファミリー: CGRP遺伝子欠損マウスおよびAM遺伝子欠損マウスを用いて、CGRPファミリーが関与する呼吸器疾患の病態メカニズムの解明を目指した。
結果と考察
1)LTB4受容体遺伝子ノックアウトマウスを用いた解析により、気管支喘息モデルにおける気道過敏性、炎症細胞浸潤にLTB4受容体が関与することが示唆された。
2)マウスβ-defensinは舌、精巣上体、食道、気管など広範に発現を認めた。特に、舌において最も強い発現を確認した。さらにその発現は加齢にて減少傾向がみられたことより、高齢者の肺炎発症における局所関連因子の可能性も考えられる。
3)AM遺伝子欠損マウスにおいて気道過敏性が亢進することが明らかとなった。このことより内因性AMの減少が、気道過敏性の亢進に関与することが示唆される。
結論
脂質性メディエ-タ-、抗菌ペプチド、CGRPファミリーなどは、呼吸器系炎症の発症・制御に寄与している可能性が高く、治療薬開発の標的として有望であることが期待される。本研究成果は、難治性の老年者呼吸器炎症性疾患に対する新治療薬開発の実現化に寄与することが予想される。

公開日・更新日

公開日
2005-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400308B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者炎症性・難治性肺疾患における病態分子機序の解明および新治療法開発の戦略的展開
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
長瀬 隆英(東京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 裕基(東京大学大学院医学系研究科)
  • 石井 聡(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老年者における重症肺感染症(特に嚥下性肺炎)、ARDS、特発性間質性肺炎、気管支喘息などは、炎症を主体とする病態であり、治療の困難さや発症頻度から、社会的にも極めて重大な疾患群である。しかし、その発症機構については十分な検討がなされていない。本研究では、近年、その生理学的意義が注目されている 1) 脂質性メディエ-タ-、2) 抗菌ペプチド、および3)CGRPファミリーなどその他のメディエ-タ-に着目し、老年者炎症性肺疾患発症との関連を探索する。
研究方法
本研究では、1) 脂質性メディエ-タ-、2) 抗菌ペプチド、および3)CGRPファミリーに着目し、老年者炎症性肺疾患発症との関連を探索した。
1)脂質性メディエ-タ-:   発生工学的手法を応用し、脂質性メディエ-タ-の炎症性肺疾患発症機序における重要性について検討した。2)抗菌ペプチド: 抗菌ペプチドdefensinの炎症性呼吸器疾患発症分子機構への関与について検討を加えた。3)CGRPファミリー: 生理活性作用を有する循環ペプチドは、気管支喘息、ARDSなどの治療薬開発の標的としても画期的な系であると考えられる。本研究では、CGRP遺伝子欠損マウスおよびAM遺伝子欠損マウスを用いて、CGRPファミリーが関与する呼吸器疾患の病態メカニズムの解明を目指した。 
結果と考察
1)cPLA2が、肺線維症およびARDSの発症機序に重要であることが明らかとなり、治療標的となる可能性が示唆された。
またLTB4受容体が気管支喘息モデルにおける気道過敏性、炎症細胞浸潤に関与することが示唆された。
2)マウス筋肉、およびヒト・マウス精巣上体に発現する新しいbeta defensin を発見した。また新たにmBD6トランスジェニックマウスを作成し検討したところ、mBD6と筋ジストロフィーとの関連が示唆された。またマウスβ-defensinは舌、精巣上体、食道、気管など広範に発現を認めた。
3)CGRP、AMが気管支喘息に関与することが示唆された。
結論
脂質性メディエ-タ-、抗菌ペプチド、CGRPファミリーなどは、呼吸器系炎症の発症・制御に寄与している可能性が高く、治療薬開発の標的として有望であることが期待される。本研究成果は、難治性の老年者呼吸器炎症性疾患に対する新治療薬開発の実現化に寄与することが予想される。

公開日・更新日

公開日
2005-03-28
更新日
-