痴呆高齢者の自動車運転と権利擁護に関する研究

文献情報

文献番号
200400307A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆高齢者の自動車運転と権利擁護に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(愛媛大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 直人(高知大学 医学部)
  • 荒井 由美子(国立長寿医療研究センター 長寿政策科学研究部)
  • 博野 信次(神戸学院大学 人文学部)
  • 野村 美千江(愛媛県立医療技術大学 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,207,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、1)痴呆高齢ドライバーの実態調査と住民の意識調査、2)痴呆の原因疾患別の運転技能評価、3)痴呆の認知機能と運転能力の関連性の検討、4)痴呆高齢ドライバーの家族介護者における介護負担と対応のあり方に検討、5)痴呆高齢ドライバーの運転中断方法の検討、を目的とする。
研究方法
1)大都市と山間過疎地の高齢者に痴呆症患者の自動車運転に関するアンケート調査を実施した。2)外来通院中のアルツハイマー病(AD)と前方型痴呆(FTLD)の運転特徴、事故について検討した。3)重症度の異なるAD患者と健常高齢者の運転能力をドライブシミュレーター(DS)の運転適正検査で測定した。4)痴呆症の運転中止への家族の対処および関連する要因を抽出し分析した。5)提出が義務化された免許更新時の病状申告書がスクリーニングとして有効に働いているかを検討した。
結果と考察
1)大部分の高齢者が痴呆症患者は運転をやめるべきだと考えており、痴呆症患者の運転中止の決定者としては、家族および医師を選択した。しかし、痴呆症患者の運転免許が取り消しとなりうることを知っている人は少なく、啓発活動が必要である。運転に関する依存度は、山間過疎地の方が大きく、運転中止を勧める場合、代替交通機関の確保が必要となることが予想された。2)予備的段階ではあるが、FTLDの方がADに比べて事故率が高いこと、前者は車間距離のつめ過ぎや注意散漫、後者は走行中に迷う、などの運転特徴が明らかになりつつある。3)DSの検査項目だけでは、ADと健常群間で重複している範囲があり、2群を明確に区別することができなかった。4)運転中止が円滑に運ばない背景には、年齢や生活の利便性、家族の認識、家族の関係性、周囲のサポート等多くの要因が存在し、自動車の運転は単に本人固有の能力ではなく、生活の糧に直結し、誇りや役割といった自尊感情に関連することが明らかになった。5)非痴呆性疾患患者は免許更新時にも申告書での病状報告が可能であったが、痴呆患者は自身の病状を申告書の形式で反映することは困難であった。
結論
最終年度は、免許更新時の申告書に代わるスクリーニング方法の開発、DSの判定プログラムの開発や認知機能検査との併用方法の検討について取り組む必要がある。また、痴呆患者の家族、主治医、警察の連携方法や、運転中止を円滑に進めるための家族支援に関する研究を進展させたい。

公開日・更新日

公開日
2005-10-25
更新日
-