アルツハイマー病に対する経口ワクチン療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400298A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病に対する経口ワクチン療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
原 英夫(国立長寿医療センター研究所 血管性痴呆研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 田平 武(国立長寿医療センター研究所 )
  • 高橋慶吉(国立長寿医療センター研究所 血管性痴呆研究部)
  • 鍋島俊隆(名古屋大学大学院医学研究科医療薬学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,815,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、アルツハイマー病に対する経口ワクチン療法の開発を行っている。今回、経口ワクチン療法により動物モデルマウス(Tg2576)の血清及び脳組織でのTGF-b濃度を測定した。6ヶ月齢の動物モデルマウスの高次脳機能を解析した。さらに老人斑形成が見られる高齢のアフリカミドリザルに経口ワクチンを投与し、短期間での効果を解析した。
研究方法
1.アデノ随伴ウイルスの経口投与;動物モデルマウスにAb1-43/rAAVを1回経口投与した。アフリカミドリザルに対してはAb1-43/rAAVまたはGFP/rAAVの腸溶剤カプセルを1回のみ経口投与し、3ヶ月後に解剖した。2. アフリカミドリザル血清中の抗Ab抗体をELISA法で検出した。3. 免疫組織染色;脳組織中の老人斑とTGF-bを染色した。4.マウス血清中のTGF-b1 濃度は、ELISA kitを用いて測定した。5. 未治療の6ヶ月齢の動物モデルマウスの高次脳機能解析(自発的交替行動試験、新規物質認識試験、モリス水迷路試験)を行った。
結果と考察
(1)未治療の6ヶ月齢の動物モデルマウスの高次脳機能解析では自発交替行動の障害が認められた。新規物質認識試験・モリス水迷路試験では両マウス間には有意な差は認められなかった。 (2) 経口ワクチン投与した動物モデルマウス血清中のTGF-b1 濃度は治療群で有意に減少していた。コントロール群のマウス脳組織では、TGF-b1 の発現が強く認められ、治療群のマウス脳では、有意にTGF-b1 の発現が減少していた。 (3)経口ワクチン投与により、老齢のアフリカミドリザルの脳老人斑は減少傾向を示した。著明な変化は、神経細胞内Ab蛋白に見られ、治療群では激減していた。さらに小脳の老人斑は、経口ワクチン投与により改善を示した。
結論
アルツハイマー病の動物モデルマウスでは、6ヶ月齢で自発交替行動の障害が認められ、この月齢で既にAbオリゴマーによるシナプス障害が起こっている可能性が示唆された。分泌型Ab発現アデノ随伴ウイルスベクターの経口ワクチンは、脳組織及び血清TGF-b 1を減少させることにより、アルツハイマー病脳血管へのアミロイド沈着や微小血管変性等の病理を改善する可能性が示唆された。老齢サルに経口ワクチン投与後3ヶ月間の期間で、神経細胞内Ab蛋白沈着が激減し、小脳のアミロイドb蛋白沈着や老人斑の減少などの改善を示した。

公開日・更新日

公開日
2005-03-30
更新日
-