老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査

文献情報

文献番号
200400297A
報告書区分
総括
研究課題名
老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
萩野 浩((社)日本整形外科学会 骨粗鬆症委員会)
研究分担者(所属機関)
  • 阪本桂造(昭和大学医学部)
  • 中村利孝(産業医科大学)
  • 遠藤直人(新潟大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.大腿骨頚部(近位部)骨折症例の発生頻度(性別・年齢別)、受傷原因の詳細、手術までの期間、治療法の選択、入院期間を全国規模で明らかとする。

2.定点観測により、大腿骨頚部骨折症例の身体機能・生命予後を明らかとする。

3.上肢骨折の発生率を明らかとする。
研究方法
1.国内全ての日本整形外科学会認定研修施設および臨床整形外科有床診療所 計3,599施設を対象に、平成15年に発生し、治療を受けた大腿骨頚部骨折患者について、年齢、性をはじめ、治療内容について調査した。

2.上記施設のうち 158施設を全国から均等に選択し、平成11年?13年発症の大腿骨頚部骨折患者を対象に、治療法の詳細、治療1年後の身体機能予後、生命予後について調査した結果を解析した。

3.平成16年に新潟県佐渡島(人口70,011人)で発生した上肢骨折を対象として全数調査を行った。
結果と考察
1.全国調査では最終的に44,807例の大腿骨頚部(近位部)骨折症例が登録・解析された。患者数は80?89歳が、受傷原因は立った高さからの転倒が、最も多かった。入院後手術までの期間は平均 5.6日(中央値4日)で、94.0%の症例で観血的治療が行われていた。初期治療に要した入院期間は平均49.2日で、90歳以上の超高齢者では90歳未満例に比べて入院期間が短かった。

2.定点観測の結果、術後1年のADL自立度調査では、「1.交通機関を利用して自由に外出する」完全自立は16.9%、「2.隣近所へなら独力で外出する」が13.9%で、両者合わせた自力で独立しているものは30.8%と、術前に比較して23ポイントの低下を認めた。また、1年後の生存率は、80歳が80%台、91歳が70%台と加齢と共に低下が見られた。

3.橈骨遠位端骨折は78名(男性19名、女性59名)、上腕骨近位端骨折は27名(男性4名、女性23名)が受傷していた。このうち地域外住民4名を除外すると、発生率(人口10万人当たり)は橈骨遠位端骨折108.6、上腕骨近位端骨折37.1で、平均年齢は橈骨遠位端骨折60.2歳、上腕骨近位端骨折75.7歳であった。両骨折の性・年齢階級別発生率は、報告されている欧米白人に比較して低値であった。
結論
全国の整形外科施設を対象に調査を行い、大腿骨頚部骨折の発生と治療の現状および術後の身体機能・生命予後を明らかとした。さらに高齢者上肢骨折の発生状況を示した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-