老齢者のソフトポーズとエネルギー代謝に及ぼす新規ホルモングレリンの役割と臨床応用

文献情報

文献番号
200400284A
報告書区分
総括
研究課題名
老齢者のソフトポーズとエネルギー代謝に及ぼす新規ホルモングレリンの役割と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
寒川 賢治(国立循環器病センター研究所(生化学部))
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学医学部)
  • 千原 和夫(神戸大学大学院)
  • 芝崎 保(日本医科大学)
  • 大津留 晶(長崎大学医学部)
  • 児島 将康(久留米大学分子生命科学研究所)
  • 赤水 尚史(京都大学医学部付属病院)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
35,623,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成長ホルモン(GH)分泌低下は、ソマトポーズとよばれ、高齢者における生活の質(QOL)の低下を引き起こす。代表研究者らが発見したグレリンは、強力なGH分泌促進作用を持ち、骨代謝およびエネルギー代謝障害、心肺機能や免疫能低下などの老化現象に対し、改善作用を有することが明らかにされつつある。本年度はこれまでに実施してきた基礎研究を基盤に、グレリンの臨床応用に向けて、以下のような広範な検討を行った。
研究方法
1) グレリンの脂肪酸修飾に及ぼす経口脂質摂取の影響、2) グレリントランスジェニックマウスの機能解析、3)グレリン受容体アンチセンス導入トランスジェニックラットを用いたグレリンのエネルギー代謝調節機構の解明、4) エンドトキシン投与ラットにおけるグレリンの病態生理学的意義、5) 高齢ラットにおけるグレリン作用の評価、6) 高齢者におけるGH分泌予備能とグレリンの関連、7) 胃切除術後患者へのグレリン補充療法およびグレリンの臨床第II相試験に向けての取り組み
結果と考察
経口摂取した中鎖脂肪酸が、グレリンの脂肪酸修飾基質として直接利用されることを明らかにした。グレリントランスジェニックマウスの解析から、過剰産生されたdes-acylグレリンによるGH-IGF-I axis抑制機構が示唆された。痩せを呈するグレリン受容体アンチセンス導入トランスジェニックラットでは、中枢からのグレリンによる交感神経出力抑制系の情報伝達が障害されている可能性が示唆された。敗血症モデル動物におけるグレリン作用の検討から、critical illnessに対するグレリンの有効性が示された。高齢ラットにおいてもグレリンのGH分泌および摂食亢進作用は維持されており、また、高齢者におけるGH分泌予備能の低下に血中グレリン値は関与しない可能性が示唆された。胃切除術後の機能障害と血中グレリン濃度との間には相関関係が見られ、同患者を対象にグレリン補充療法臨床研究が開始された。さらに本年度は、臨床第II相試験「人工変形性股関節置換術周術期患者に対するグレリンの臨床効果に関する第II相臨床試験」を計画し、準備を進めている。
結論
グレリンの病態生理学的意義やソマトポーズ治療に対する有効性が、基礎と臨床の両面から明らかにされた。超高齢化社会に向けて、グレリン研究の重要性が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400284B
報告書区分
総合
研究課題名
老齢者のソフトポーズとエネルギー代謝に及ぼす新規ホルモングレリンの役割と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
寒川 賢治(国立循環器病センター研究所(生化学部))
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学医学部)
  • 千原 和夫(神戸大学大学院)
  • 芝崎 保(日本医科大学)
  • 大津留 晶(長崎大学医学部)
  • 児島 将康(久留米大学分子生命科学研究所)
  • 赤水 尚史(京都大学医学部附属病院)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢化社会を迎えるにあたり、高齢者における生活の質(QOL)の向上は、医療費の軽減や国民の長期に渡る健康の享受にも繋がる重要な課題である。代表研究者らが発見したグレリンは、強力な成長ホルモン(GH)分泌促進作用を持ち、老化促進の一因であるソマトポーズ治療の担い手として期待されている。本研究事業では、グレリンの生体調節機構の解明およびソマトポーズ治療への臨床応用を目指し、以下のような方法で広範な研究を実施した。
研究方法
1)脂質摂取によるグレリンのアシル化効果、 2) 遺伝子改変動物を用いたグレリンの生理学的意義に関する研究、3)グレリンの情報伝達系とcritical illnessにおける病態生理学的意義、4)加齢に伴うグレリン動態の変化およびその作用についての検討、5)グレリンの臨床応用
結果と考察
グレリンのGH分泌活性にはグレリン分子の脂肪酸修飾が必須である。食餌中の脂肪酸が直接グレリンの脂肪酸修飾基として利用され、活性型グレリンを増加させることを証明した。遺伝子改変動物を用いた研究から、des-acylグレリンによるGH-IGF-I axisの抑制機構や交感神経抑制に基づくグレリンのエネルギー同化機構が明らかになった。グレリンのGH分泌や摂食に関する情報は、迷走神経求心路により中枢に伝達されることが証明された。敗血症モデルラットへのグレリン投与は、摂餌量や体重の増加をもたらすことから、グレリンはcritical illnessに対しても有効に作用する可能性が示唆された。加齢動物や高齢者を対象としたGH分泌予備能の研究から、グレリン作用は加齢による影響を受けにくいことが示唆された。胃切除術後患者の食欲低下や体重減少は、血中グレリン値の低下と相関があり、現在胃切除患者を対象にグレリン補充療法を開始している。初年度の本研究事業において、グレリンの臨床第I相試験は終了し、現在、臨床第II相試験として「人工変形性股関節置換術周術期患者に対するグレリンの臨床効果に関する第II相臨床試験」を計画し、準備を進めている。
結論
グレリンのソマトポーズに対する臨床応用に向けて、基礎と臨床の両面からのグレリン研究が着実に成果を上げている。今後さらにグレリンの分泌制御機構やソマトポーズをはじめとする病態との関連を解明し、臨床応用の確立に向けて研究を展開させたい。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-