老人性肺炎予防の新戦略-Evidence Based Medicine確立のための大規模研究

文献情報

文献番号
200400283A
報告書区分
総括
研究課題名
老人性肺炎予防の新戦略-Evidence Based Medicine確立のための大規模研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大類 孝(東北大学医学部附属病院(老年・呼吸器内科))
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 清久(筑波大学大学院臨床医学系内科学(呼吸器内科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,322,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的=(1)嚥下機能および咳反射改善作用を有するアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の投与が、脳血管障害を有する高血圧患者において肺炎の予防効果を有するか否かを明らかにした。(2)また、長期療養型老人福祉施設に入所中のADLの低下した高齢者を対象として、これらの高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの有用性について検討した。
研究方法
研究方法=(1)外来通院中の1,426名の高血圧合併脳血管障害患者(年齢68歳から89歳まで、平均75歳)を対象として、本人および家族の同意を得た上で、無作為にACE阻害剤投与群、カルシウム拮抗剤投与群、利尿剤投与群のいずれかに分割し、その後の肺炎の発症の有無につき前向きに3年間調査した。コントロールとして高血圧非合併脳血管障害患者(160名、平均年齢76歳)も同時に登録し、各群総計1,586名を追跡調査した。(2)高齢者介護施設に入所中の寝たきり高齢者294名(平均年齢81歳、男性70人)を対象として、本人および家族の同意を得た上で、無作為にワクチン投与群および非投与群に分割した。ワクチン投与群には、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)0.5mLを皮下注射し、その後、両群間で1年間における発熱状況、他病院への入退院の有無、生命予後につき比較検討をした。
結果と考察
結果と考察=(1)ACE阻害剤投与群では430名中12名(2.8%)に、カルシウム拮抗剤投与群では409名中36名(8.8%)に、利尿剤投与群では351名中29名(8.3%)に、コントロール群では160名中14名(8.8%)に、追跡期間中の新規の肺炎発症が確認された。即ち、ACE剤投与群では、コントロールに比して有意に肺炎発症率が抑制された(p=0.001)。(2)ワクチン投与群では非投与群に比して発熱日数の有意な減少(平均±標準誤差:3.7±0.5日/人/年vs 6.6±0.8日/人/年、p=0.002)、および肺炎による入院回数の有意な減少(0.23±0.04回/人/年vs 0.46±0.06回/人/年、p=0.0006)を認めた。
結論
結論=ACE阻害剤は、高血圧合併脳血管障害患者に対して肺炎の予防効果を有する事が明らかにされた。また、寝たきり高齢者における肺炎球菌ワクチンの投与は有効で、今後、これらの方々にワクチン投与を積極的に推奨すべきと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400283B
報告書区分
総合
研究課題名
老人性肺炎予防の新戦略-Evidence Based Medicine確立のための大規模研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大類 孝(東北大学医学部附属病院(老年・呼吸器内科))
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 清久(筑波大学大学院臨床医学系内科学(呼吸器内科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的=(1)嚥下機能および咳反射改善作用を有するアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の投与が、脳血管障害を有する高血圧患者において肺炎の予防効果を有するか否かを明らかにした。(2)また、長期療養型老人福祉施設に入所中のADLの低下した高齢者を対象として、これらの高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの有用性について検討した。
研究方法
研究方法=(1)外来通院中の1,426名の高血圧合併脳血管障害患者(年齢68歳から89歳まで、平均75歳)を対象として、本人および家族の同意を得た上で、無作為にACE阻害剤投与群、カルシウム拮抗剤投与群、利尿剤投与群のいずれかに分割し、その後の肺炎の発症の有無につき前向きに3年間調査した。コントロールとして高血圧非合併脳血管障害患者(160名、平均年齢76歳)も同時に登録し、各群総計1,586名を追跡調査した。(2)高齢者介護施設に入所中の寝たきり高齢者294名(平均年齢81歳、男性70人)を対象として、本人および家族の同意を得た上で、無作為にワクチン投与群および非投与群に分割した。ワクチン投与群には、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)0.5mLを皮下注射し、その後、両群間で1年間における発熱状況、他病院への入退院の有無、生命予後につき比較検討をした。
結果と考察
結果と考察=(1)ACE阻害剤投与群では430名中12名(2.8%)に、カルシウム拮抗剤投与群では409名中36名(8.8%)に、利尿剤投与群では351名中29名(8.3%)に、コントロール群では160名中14名(8.8%)に、追跡期間中の新規の肺炎発症が確認された。即ち、ACE剤投与群では、コントロールに比して有意に肺炎発症率が抑制された(p=0.001)。(2)ワクチン投与群では非投与群に比して発熱日数の有意な減少(平均±標準誤差:3.7±0.5日/人/年vs 6.6±0.8日/人/年、p=0.002)、および肺炎による入院回数の有意な減少(0.23±0.04回/人/年vs 0.46±0.06回/人/年、p=0.0006)を認めた。
結論
結論=ACE阻害剤は、高血圧合併脳血管障害患者に対して肺炎の予防効果を有する事が明らかにされた。また、寝たきり高齢者における肺炎球菌ワクチンの投与は有効で、今後、これらの方々にワクチン投与を積極的に推奨すべきと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-