蛋白質のフォールディング異常に着目した、分子シャペロンによる神経変性疾患の根本的治療法の開発

文献情報

文献番号
200400282A
報告書区分
総括
研究課題名
蛋白質のフォールディング異常に着目した、分子シャペロンによる神経変性疾患の根本的治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病などの神経変性疾患の根本的な原因は、蛋白質のフォールディング(高次構造・折り畳み構造)異常である。そこで神経変性疾患を根本的に治療するためには、異常なフォールディングの蛋白質を正常へ戻すことが必要である。分子シャペロンは細胞内で蛋白質が正しいフォールディングをとるのを助けている一群の蛋白質であり、ストレスによってフォールディングが異常になってしまった蛋白質を正常に戻すことが出来る。そこで我々は、分子シャペロンを利用した神経変性疾患の根本的治療法を確立するための研究を提案する。
研究方法
漢方医薬研究振興財団から生薬成分、漢方薬などを供与して頂き、毒性のないシャペロン誘導剤のスクリーニングを行った。具体的には、HSP70,HSP90、GRP78と結合する物質を検索した。また種々の分子シャペロンに関して、抗体、過剰発現プラスミド、精製蛋白質などを整備した。HSF1ノックアウトマウスとAPP(βアミロイド前駆体蛋白質)の掛け合わせを行い、そのβアミロイドの状態を調べた。種々の分子シャペロン、及び昨年度発見した毒性のないHSP誘導剤のβアミロイド、及びポリグルタミンの凝集に対する効果を調べた。
結果と考察
約400種の生薬成分、漢方薬などから、毒性のないシャペロン誘導剤のスクリーニングを行った。具体的には、HSP70,HSP90、GRP78と結合する物質を検索した。その結果、毒性のないHSP誘導剤4種(朝鮮あさがおなど由来)、毒性のないGRP誘導剤5種(オオバコなど由来)を発見した。一方昨年度単離した毒性のないHSP誘導剤(ウワウルシ由来)を用いて、その神経変性疾患に対する効果を細胞、及び動物レベルで検討した。まず、APP(アルツハイマー病の原因蛋白質、βアミロイドの前駆体)を発現している細胞に作用させたところ、培地中へのβアミロイドの放出が顕著に抑制された。またAPPノックインマウスにこの誘導剤を投与したところ、脳でHSPを誘導するとともに、脳内のβアミロイドの量の低下が見られた。さらに細胞内で再現したポリグルタミンの凝集に対しても、抑制効果を示した。
結論
以上の研究から、分子シャペロンが神経変性疾患に有効であることが示唆された。本研究で発見した種々の分子シャペロン誘導剤は、新しい神経変性弛緩の治療薬になることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400282B
報告書区分
総合
研究課題名
蛋白質のフォールディング異常に着目した、分子シャペロンによる神経変性疾患の根本的治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病などの神経変性疾患の根本的な原因は、蛋白質のフォールディング(高次構造・折り畳み構造)異常である。そこで神経変性疾患を根本的に治療するためには、異常なフォールディングの蛋白質を正常へ戻すことが必要である。分子シャペロンは細胞内で蛋白質が正しいフォールディングをとるのを助けている一群の蛋白質であり、ストレスによってフォールディングが異常になってしまった蛋白質を正常に戻すことが出来る。そこで我々は、分子シャペロンを利用した神経変性疾患の根本的治療法を確立するための研究を提案する。
研究方法
放射標識したGGAを用いて、まずGGA結合蛋白質の検索系を確立した。次に、ヒト細胞粗抽出液中に、GGA結合蛋白質を発見したので、複数のカラムクロマトグラフィーを用いて、その結合蛋白質を精製した。漢方医薬研究振興財団から生薬成分、漢方薬などを供与して頂き、毒性のないシャペロン誘導剤のスクリーニングを行った。また種々の分子シャペロンに関して、抗体、過剰発現プラスミド、精製蛋白質などを整備した。
結果と考察
我々はヒト胃粘膜細胞の粗抽出液中にGGAと結合する因子を発見した。そのアミノ酸配列を決定したところ、HSP70、及びHSP90であった。約400種の生薬成分、漢方薬などから、毒性のないシャペロン誘導剤のスクリーニングを行った。具体的には、HSP70,HSP90、GRP78と結合する物質を検索した。その結果、毒性のないHSP誘導剤4種(朝鮮あさがおなど由来)、毒性のないGRP誘導剤5種(オオバコなど由来)を発見した。一方昨年度単離した毒性のないHSP誘導剤(ウワウルシ由来)を用いて、その神経変性疾患に対する効果を細胞、及び動物レベルで検討した。まず、APPを発現している細胞に作用させたところ、培地中へのβアミロイドの放出が顕著に抑制された。またAPPノックインマウスにこの誘導剤を投与したところ、脳でHSPを誘導するとともに、脳内のβアミロイドの量の低下が見られた。さらに細胞内で再現したポリグルタミンの凝集に対しても、抑制効果を示した。
結論
以上の研究から、分子シャペロンが神経変性疾患に有効であることが示唆された。本研究で発見した種々の分子シャペロン誘導剤は、新しい神経変性弛緩の治療薬になることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)