文献情報
文献番号
200400281A
報告書区分
総括
研究課題名
腎薬物トランスポータの遺伝子機能解析を基盤とした高齢者の医薬品適正使用推進に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
乾 賢一(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
- 土井 俊夫(徳島大学 医学部)
- 深津 敦司(京都大学医学部附属病院 人工腎臓部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
24,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
腎薬物トランスポータ群の機能特性、遺伝子多型並びに発現変動機構などの情報をもとに薬物腎排泄能の個体差を規定する重要因子を解明し、高齢者の薬物療法へ応用するための方法論確立を目標とする。
研究方法
薬物トランスポータの機能解析:培養細胞発現系を用いて輸送機能の特性について検討した。
腎疾患患者における薬物トランスポータの発現変動および薬物体内動態に関する解析:腎生検組織検査が施行された患者の余剰腎生検組織からtotal RNAを精製し、リアルタイムPCR法によってmRNAを定量した。また、腎生検施行後に投与されるセファゾリンの消失速度を算出した。
hOAT3遺伝子多型解析:血液検体からゲノムDNAを精製し、直接シークエンス法並びにポリメラーゼ連鎖反応-制限酵素断片長多型法によって解析した。
腎疾患患者における薬物トランスポータの発現変動および薬物体内動態に関する解析:腎生検組織検査が施行された患者の余剰腎生検組織からtotal RNAを精製し、リアルタイムPCR法によってmRNAを定量した。また、腎生検施行後に投与されるセファゾリンの消失速度を算出した。
hOAT3遺伝子多型解析:血液検体からゲノムDNAを精製し、直接シークエンス法並びにポリメラーゼ連鎖反応-制限酵素断片長多型法によって解析した。
結果と考察
薬物トランスポータの機能解析:主要な腎有機アニオントランスポータhOAT1及びhOAT3の機能解析を行った。セフェム系抗生物質はhOAT3に、腎機能検査薬パラアミノ馬尿酸はhOAT1に輸送されるなど基質認識特性に差があり、薬物腎排泄における各トランスポータの役割が異なると推察された。一方、クレアチニンが有機カチオントランスポータhOCT2によって輸送された。従ってクレアチニンクリアランスと糸球体濾過速度とに差が認められるのは、hOCT2に起因することが示唆された。
腎疾患時における薬物トランスポータの発現変動および薬物体内動態:正常腎組織と比較した結果、腎生検組織ではhOAT1発現量が顕著に低下したがhOAT2発現量には有意差が認められないなど、各トランスポータが異なる発現変動を示した。
またhOAT3発現量とセファゾリン消失速度との間に有意な相関が得られたが、この相関係数はメサンギウム増殖性糸球体腎炎患者を抽出することで顕著に改善した。
hOAT3遺伝子多型解析:1箇所のnonsynonymous mutationを見出した。この変異によってhOAT3機能は変動したものの、変異を有する患者群とその他の患者群とでセファゾリン消失速度に有意差は認められなかった。
腎疾患時における薬物トランスポータの発現変動および薬物体内動態:正常腎組織と比較した結果、腎生検組織ではhOAT1発現量が顕著に低下したがhOAT2発現量には有意差が認められないなど、各トランスポータが異なる発現変動を示した。
またhOAT3発現量とセファゾリン消失速度との間に有意な相関が得られたが、この相関係数はメサンギウム増殖性糸球体腎炎患者を抽出することで顕著に改善した。
hOAT3遺伝子多型解析:1箇所のnonsynonymous mutationを見出した。この変異によってhOAT3機能は変動したものの、変異を有する患者群とその他の患者群とでセファゾリン消失速度に有意差は認められなかった。
結論
メサンギウム増殖性糸球体腎炎患者では、hOAT3発現量が腎薬物排泄能の予測因子となる。薬物腎排泄はトランスポータ発現量によって規定されるが、精度の高い予測系構築には原疾患などの要因を加味する必要があることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2005-04-11
更新日
-