脳神経疾患に随伴する過活動膀胱の新規治療薬の開発に関する研究:既存薬品に新たに発見された作用を基にして

文献情報

文献番号
200400265A
報告書区分
総括
研究課題名
脳神経疾患に随伴する過活動膀胱の新規治療薬の開発に関する研究:既存薬品に新たに発見された作用を基にして
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高濱 和夫(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 白崎 哲哉(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 副田 二三夫(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 大川原 正(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、これまでに、鎮咳薬のクロペラスチン(CP)が脳梗塞に伴う過活動膀胱や排尿困難などを著明に改善すること、また、CPはGタンパク質共役型の内向き整流性Kイオン(GIRK)チャネルの活性化電流を抑制するなどを見出した。本研究の目的は、1)GIRKチャネル抑制作用と排尿障害改善作用との関連をより明確すること、2)GIRKチャネルの脳梗塞に伴う排尿障害発症への関与を明らかにすること、さらに、CPの作用メカニズムの分子レベルでの追究基盤の構築を構築すること、である。
研究方法
1)SD系雄生ラットを用い、慢性膀胱瘻を作製、左中大脳動脈塞栓による脳梗塞を作製
した。これを用いて、シングルシストメトリー法により排尿反射機能を記録し、各種抗うつ薬の作用を調べた。また、排尿反射関連核のGIRKチャネルおよび5-HT1A受容体のmRNA発現をRT-PCR法により調べた。2)慢性膀胱瘻をもったマウスの脳梗塞モデルを作成し、排尿反射機能を調べた。3)CPのGIRKチャネルに対する作用をシングルチャネルレベルを含めてパッチクランプ法によりさらに検討した。4)ラセミ体のCPの光学活性体の分割を試みた。
結果と考察
1)抗うつ薬の中でセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)の取り込みを同程度に阻害するアミトリプチリンは過活動膀胱様の症状は改善したが、排尿困難は改善しなかった。また、NA取り込み阻害作用が強いマプロチリンはいずれにも作用しなかった。脳梗塞ラットの排尿反射関連核において、GIRKチャネルmRNAレベルの発現が有意に上昇した。2)ddYおよびC57BL/6jの両系統の雄マウスの脳梗塞モデルでの無麻酔下での排尿反射機能の記録に成功した。両系統とも排尿困難症状を示したが、無排尿性収縮はddY系のみで観察され、種差が認められた。3)CPはGIRKのシングルチャネルレベルでテルチアピンとは異なる作用様式をもつことが示唆された。4)CPの光学活性体を得るために、カンファースルホン酸、酒石酸およびchiralpak HPLCにより分離を試みる段階に達した。
結論
本研究の結果、脳梗塞に伴う排尿障害の治療にGIRKチャネル抑制作用物質が有効である可能性が一段と高くなった。また、脳梗塞に伴う排尿障害の発症メカニズムや作用薬のメカニズムを分子レベルで追究する基盤を構築できた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)