健康寿命延長に関する戦略的研究

文献情報

文献番号
200400260A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命延長に関する戦略的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本山 昇(国立長寿医療センター・研究所 老年病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 澤 洋文(北海道大学大学院医学研究科)
  • 大田 力(国立がんセンター・研究所・腫瘍ゲノム解析情報研究部)
  • 渡辺 研(国立長寿医療センター・研究所 運動器疾患研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
哺乳類においてカロリー制限(CR)は唯一、老年病の発症を遅延し健康寿命を延長することが明らかにされている。一方、早期老化症の原因遺伝子の同定により、ゲノム構造の維持と老化との関連が明らかになってきた。本研究は、CRによる健康寿命の延長とゲノムDNAの安定化機構の関連を明らかにすることを目的とする。
研究方法
FOXOの転写活性におけるSIRT1の機能を免疫沈降法、ウエスタンブロット解析、ルシフェラーゼリポーターアッセイなどによって解析した。また、ATM KOマウスの骨髄より細胞を調製し分化試験を行った。また、新生児の頭骸冠より骨芽細胞を調製し解析に用いた。
結果と考察
線虫において寿命延長、ストレス抵抗性に必須な転写因子DAF-16の哺乳類ホモログであるフォークヘッド転写因子FOXOファミリーが酸化ストレスに応答して細胞周期停止、アポトーシス、DNA修復に関与するストレス応答性遺伝子の転写制御を行いゲノムDNAの安定化に寄与していることを明らかにした。また、寿命延長効果を持つSir2(SIRT1)とFOXOの関連に着目し、酸化ストレスによって核に移行したFOXOは転写共役因子ヒストンアセチル化酵素p300及びSIRT1と相互作用し、アセチル化・脱アセチル化を受け転写活性が制御されていることを見出した。CRによってインスリンやIGF-1のレベルは低下しているので、FOXOは核内に存在する割合が増加していると考えられる。また、CRによってSIRT1の発現が増加することが報告されているので、FOXOファミリーとSIRT1は哺乳類におけるCRに応答した寿命延長において共同して作用していると示唆される。さらに、早期老化症モデルマウスATM KOマウスにおける骨粗鬆症について検討し、骨形成指標や骨吸収指標において顕著な低下が検出された。ATM KOにおける骨量減少が骨芽細胞系機能低下、とりわけ多分化能を有する骨髄間葉系細胞の増殖不全により引き起こされている可能性を明らかにした。この機能低下と酸化ストレスおよびIGF-Iシグナルカスケードとの関連が考えられる。
結論
1.SIRT1はNAD依存性脱アセチル化活性を介してFOXOファミリーの転写活性を制御していることが明らかになった。
2.ATMKOマウスは老人性骨粗鬆症様骨病態を呈し、間葉系幹細胞の増殖能低下による組織再生不良がその原因と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-03-28
更新日
-