伊万里市黒川町における老化に関する長期縦断疫学研究

文献情報

文献番号
200400259A
報告書区分
総括
研究課題名
伊万里市黒川町における老化に関する長期縦断疫学研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山田 茂人(佐賀大学 医学部精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 原岡 一馬(久留米大学 文学部)
  • 今村 義臣(久留米大学 比較文化研究所)
  • 川島 敏郎(佐賀大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,897,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成2年より伊万里市黒川町において65歳以上の高齢者を対象に知的機能とMRIによる脳形態の関連に関する研究が開始された。同時に認知症予防のための支援システムが構築された。即ち、知的機能検査(かなひろいテスト(KANA))とmini-mental state examination (MMSE)の施行と講演の開催。さらに知的機能の活性化のため「生きがい作り教室」が1,2週間毎に定期的に継続されている。本研究はこの活動に参加し、地域における知的機能の低下の実態の調査とその予防のための地域の支援システムの構築を目的としている。
研究方法
知的機能テストであるKANAとMMSEの妥当性を調べるために、過去10年間に4回以上KANAとMMSEを受けた高齢者の成績の変化を調べた。また65歳以上の50名について頭部MRIを施行し、種々の知的機能検査MMSE, Clock Drawing Test (CDT) Frontal Assessment Battery(FAB), Clinical Dementia Rating (CDR)及びBeck Depression Inventory(BDI)を施行し、それぞれの関連を調べた。原岡らは地区ごとに毎月巡回で開催される高齢者健康教室の参加者に対しKANAを施行するとともに、日常生活行動、生きがい満足度、ソーシャル・サポート調査を行っている。
結果と考察
4回以上KANAを受けた者の成績の変化は3回目から得点が増加し、練習効果があることが分った。放射線科医によるMRI画像の評価では脳萎縮群でMMSE,CDT得点の低下があった。一方、白質病変やラクナ梗塞と知的機能検査には関連はなかった。MMSE, CDT, FAB, CDRの成績には高い相関が認められた。FAB得点とBDI得点に負の相関があり、知的機能低下と気分障害の類縁性が認められた。KANAの成績を3群に分けると、高得点群は仕事数、趣味、楽しみが多く、生きがい満足度も高かった。5年前のKANA成績と比べ得点が上昇した群において楽しみの数、生きがい満足度、積極満足度が有意に高かった。
結論
初回測定のKANA得点はMMSE得点と正の相関があるが、3回以上繰り返すことにより得点が上昇し、KANAは個人の知的機能の変動を評価するには適当でない。KANAの上昇はある種の適応能力を示している。MMSE, CDT, FAB, CDRの成績は知的機能の評価法としてスクリーニングニ使用可能である。MRI画像の評価には白質病変やラクナ梗塞よりも脳萎縮が知的機能低下に対する診断的価値がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-