高齢者疾患病理における遺伝素因の解明

文献情報

文献番号
200400247A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者疾患病理における遺伝素因の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 卓二(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 沢辺 元司(東京都老人医療センター・剖検病理科)
  • 新井 富生(東京都老人医療センター・臨床病理科)
  • 細井 孝之(東京都老人医療センター・内分泌科)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学難治疾患研究所・分子疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定の老年病と候補遺伝子SNPとの関連を特定し、老年病の予防,治療を可能にする。
SNPを解析のために効率的なシステムを立ち上げる。
TNSALP遺伝子のcSNPの解析結果で、骨粗鬆症の予防と治療の方向性を探索。
哺乳類におけるインスリンシグナルと個体寿命、酸化ストレス耐性の関係を明らかにする。
ミトコンドリアの代謝と個体寿命の関連を明らかにし、エネルギー代謝に影響を及ぼしうる薬物の個体寿命効果を検討。
研究方法
病理解剖1,650例の患者情報、臨床情報、病理所見と遺伝子多型データを含んで、老年病剖検データベース(GEAD)を構築した。
剖検された1334例対象とし、p53遺伝子コドン72多型を検出し、病理組織学的データと統合して統計学的解析を行った。
ある高齢女性集団を対象とし、TNSALP遺伝子のSNPsの検索を行った。多型性に対応する遺伝子産物を発現させ、alkaline phosphatase活性を測定した。
高濃度酸素負荷およびパラコート投与により、インスリン受容体変異マウスの酸化ストレス耐性能を検討した。
clk-1の欠損マウス胎児培養細胞の増殖を測定した。胎児心臓を培養し、拍動数を測定し、ミトコンドリアの膜電位の測定を行った。CoQ10を添加することによってレスキュー効果を検討した。
結果と考察
老年病剖検データベースを開発した。一部は老年病SNPデータベースとしてインターネット上で公開される。
p53遺伝子多型と大腸腺腫との関連は認められないが、環境因子の関与が示唆された。
エストロゲンがMnSOD活性を増加に関与し、インスリン受容体変異マウスにおいて効果がより顕著である。カロリー制限により酸化ストレス耐性能が増強する。性ホルモンが寿命制御を担っていると示唆された。食餌制限は独立したメカニズムで寿命を制御すると示唆された。
培養したclk-1の欠損マウス心臓の拍動リズムの遅れもCoQの添加によりレスキューされた。
結論
融解曲線分析法はSNPの大量解析に向けた方法として有効性を確認した。
大腸腺腫の発生は喫煙と強い関連が認められた。
TNSALP遺伝子のcSNPは高齢女性の骨量における個人差をもたらすと示唆された。
エストロゲンが酸化ストレス耐性の向上に関与することが明らかとなった。
ウルトラディアンリズムの調節にはミトコンドリア機能を介したCoQの関与が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-22
更新日
-