経頭蓋超音波脳血栓溶解装置の開発と探索的臨床研究

文献情報

文献番号
200400243A
報告書区分
総括
研究課題名
経頭蓋超音波脳血栓溶解装置の開発と探索的臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
古幡 博(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部俊昭(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 井上聖啓(東京慈恵会医科大学 神経内科)
  • 峰松一夫(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 佐口隆之(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 石橋敏寛(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 中野みどり(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
  • 窪田 純(㈱日立メディコ 技術研究所)
  • 佐々木 明(㈱日立メディコ マーケティング製品 戦略総括本部)
  • 梅村晋一郎(㈱日立製作所 中央研究所 ライフサイエンス研究センター)
  • 東 隆(㈱日立製作所 中央研究所 ライフサイエンス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
44,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
前年技術的に完成した「経頭蓋超音波脳血栓溶解装置」を元に、有効性の確認、音響学的安全性、さらに同装置の超音波条件による医学生物学的安全性をin vivo動物実験で確認することを目的とした。また、探索的臨床研究の展開することを目的とした。
研究方法
【有効性確認】血栓塞栓型モデル(シリンジ活用、狭窄率95%)をtPA溶液で充填し、ヒト新鮮血血栓で塞栓状態とし、開発プローブで超音波照射し、再開通時間を観察した。
【音響学的安全性】超音波照射法としてバースト波300KHz、0.72W/cm2 Ispta、と開発装置の連続波500KHz、0.72 W/cm2 Isptaとを音響学的に比較した。キャビテーション発生状況についてはシュリーレン法で確認した。
[医学生物学的安全性]血液脳関門、神経保護薬併用についてラット脳塞栓モデルで病理組織学的に評価した。特に開発装置の臨床使用状況を模擬し、健常霊長類(マカカ族)を用いて経頭蓋超音波照射の安全性を病理組織学的に評価した。
結果と考察
(1)有効性:開発装置はtPA単独の溶解率63.8%から91.6%へ増高した。
(2)音響学的安全性:Istpaが同じでもバースト波のduty cycleが長いと発生したキャビテーションの可能性が高まり、また、発生したキャビテーションが消失しにくいことをヒト頭蓋骨照射で確認した。
(3)医学生物学的安全性:開発装置の最大超音波照射条件で脳梗塞状態が悪化させられないことを組織病理学的、免疫学的に示した。2)梗塞/再灌流モデルにおいて、神経保護薬の薬効を超音波は阻害しなかった。3)健常霊長類の脳に対し、開発装置の超音波条件は何らの損傷を惹起しないことを神経病理学的、免疫学的に明らかとなった。ただし、本脳血栓溶解療法は、血栓溶解剤との併用を前提とした。しかし、tPAの国内承認が得られていないため、探索的臨床研究は実行し得なかった。
結論
経頭蓋超音波脳血栓溶解装置を開発、その有効性、安全性をin vitro、in vivo実験で確認し、安全で有効な急性期脳血栓溶解療法になり得ることを確認した。

公開日・更新日

公開日
2005-07-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200400243B
報告書区分
総合
研究課題名
経頭蓋超音波脳血栓溶解装置の開発と探索的臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
古幡 博(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部俊昭(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 井上聖啓(東京慈恵会医科大学 神経内科)
  • 峰松一夫(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 佐口隆之(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 石橋敏寛(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)
  • 中野みどり(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング研究室)
  • 窪田 純(㈱日立メディコ 技術研究所)
  • 佐々木 明(㈱日立メディコ マーケティング製品 戦略統括本部)
  • 梅村晋一郎(㈱日立製作所中央研究所 ライフサイエンス研究センター)
  • 東 隆(㈱日立製作所中央研究所 ライフサイエンス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦死因3位の脳血管障害の6-7割を占める脳梗塞疾患の中でも、急性虚血性脳卒中は極めて重篤な疾患で、発症3時間以内の超急性期血栓溶解剤投与が治療の第一選択となっている。この再開通療法の効果増強のため、血栓溶解剤tPA投与と共に経頭蓋的に低周波数超音波を塞栓部に向けて照射する新治療法を提案した。そして、実用化を目指して診断と治療を一体化した「経頭蓋超音波脳血栓溶解装置」を開発することとした。装置の音響学的安全性、医学生物学的安全性を重視した前臨床的評価に力点をおき、さらに、探索的研究として急性虚血性患者に適用することも目的とした。
研究方法
装置開発に際し、①治療用500KHz Tビームと診断用2MHz Dビーム(TC-CFI用)を一体化した。すなわち、各phased arrayを積層化するプローブの実現、②その同一プローブからT/Dビームを交互に発射する制御法の採用、③Tビームを標的塞栓部へ二次元的に合わせる制御法を採用した。その際、コンピュータシミュレーションによる予測を行い最適ビーム設計とした。最終的な性能チェックを、ビームについてはシュリーレン法を、画像については10名の健常成人で、また、溶解効果はヒト新鮮血を用いた血栓塞栓モデル実験で検証した。医学生物学的安全性試験はラット脳梗塞モデルを作成し、正常状態、梗塞状態、再灌流状態について低周波超音波の無害性を病理組織学的に評価した。また、霊長類を用いて同装置による経頭蓋照射を行い、免疫染色を含む13項目の病理組織学的検査評価を行った。
結果と考察
1)経頭蓋超音波脳血栓溶解装置を完成し、その音響学的安全性を、ヒト頭蓋骨を用
いて検証した。
2)画像としての性能は積層型のプローブも市販品と同等であった。
3)溶解率向上による開存率は63.8%から91.6%へ上昇した。
4)ラット及び霊長類において低周波超音波による悪影響は認められなかった。
5)tPAの国内承認が得られていなかったため、探索的臨床研究は行えなかった。
6)既報の臨床成績の殆んどが診断用超音波をtPAに併用しており、本法が世界で始め
て診断能力付きの低周波超音波を用いた治療用診断装置になると考えられた。
結論
急性虚血性脳卒中患者の超急性期治療として活用可能と考えられる「経頭蓋超音波脳血栓溶解装置」を世界に先駆けて完成し、その有効性と安全性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2005-07-05
更新日
-