再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400238A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 武嗣(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病センター)
  • 岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
  • 藤里 俊哉(国立循環器病センター)
  • 庭屋 和夫(国立循環器病センター)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
46,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、組織バンクが整備されたことで、提供された同種血管や心臓弁が使用されつつあり、良好な成績が報告されている。しかし、我が国では提供数が絶対的に不足している。我々は、同種あるいは異種組織から細胞成分を消失させた後に患者の細胞を組み込んだテーラーメード型組織移植を目指している。この再生型組織移植では、固定化されておらず細胞も除去されているため、移植後に自己細胞が侵入することで自己組織化される。これにより、移植後に成長する移植組織が作出し得ると考えられる。
研究方法
脱細胞化処理:クラウン系ミニブタから大動脈を採取した。冷間等方圧加圧装置を用いた超高圧印加処理、続けて洗浄処理を行うことで細胞成分を除去した(パワーグラフト処理)。組織学的に観察するとともに、細胞成分の測定を行った。また、ブタ内在性レトロウイルス(PERV)の組織内量を測定した。
同種移植実験:クラウン系ミニブタを用い、脱細胞化下行大動脈を用いた同所置換手術を行った。所定期間後に移植組織を摘出し、組織学的所見を検討した。なお、動物愛護上の配慮として、麻酔や鎮痛剤の使用、最小使用数となるような実験計画の立案など、規定に沿って処理した。
結果と考察
パワーグラフト処理後の組織内では細胞核は全く染色されなかった。コラーゲン及びエラスチン繊維には若干の乱れが認められたが、強度には影響なかった。組織内のβアクチン及びPERVは全く検出されなかった。しかし、リン脂質は検出され、移植後の石灰化の要因となり得るため、洗浄処理の最適化を検討中である。
左心系である下行大動脈置換においても、破断は認められなかった。細胞は未播種であったが、内腔は移植後1ヶ月においてほぼ内皮細胞で覆われており、3ヶ月以後は完全に覆われていた。また、組織内には平滑筋細胞の良好な浸潤が認められた。移植後6ヶ月では、良好な開存及び細胞浸潤を示していたが、若干の石灰化の所見が認められた。
欧米では脱細胞化に薬液を用いた方法で、既に数グループが臨床応用を開始しているが、不十分な脱細胞化が原因と思われる不全例も報告されている。超高圧印加処理では、細菌やウイルスの不活化が既に報告されているため、パワーグラフト処理は高い安全性が確保できると考えている。
結論
パワーグラフト処理により、ミニブタ血管組織から細胞成分を除去することができた。同種動物移植実験の結果から、組織内への良好な細胞浸潤が認められた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-