GM-CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究

文献情報

文献番号
200400237A
報告書区分
総括
研究課題名
GM-CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中田 光(新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 宏一郎(国立国際医療センター)
  • 貫和 敏博(東北大学加齢医学研究所)
  • 慶長 直人(国立国際医療センター)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性肺胞蛋白症は、肺胞及び終末気管支に過剰なサーファクタントの貯留がおこり、労作時の呼吸困難を来す疾患である。我々は、従来の苦痛の大きい全肺洗浄法に代わって、在宅で行えるGM-CSF吸入療法の開発を行っている。15年度は13例に治療し、7例に奏功した。15年度に治療した患者の治療前後の気管支肺胞洗浄液中の細胞数は治療に反応した症例、反応しなかった症例ともに2~10倍程度増加しており、いづれも肺胞マクロファージの数が増えていた。ところが、著明に改善したパイロットスタディーの3例に比べて、15年度の症例では、肺胞マクロファージは治療後も小型で未分化であったことから、治療期間が肺胞マクロファージの成熟分化に要する期間に満たなかったものとおもわれた。そこで、16年度は改訂プロトコールを作成し、7施設共同の臨床試験を開始した。
研究方法
症例及び方法:全国7施設を試験施設として選定し、安静時仰臥位動脈血酸素分圧 70 mmHg未満の患者で気管支肺胞洗浄あるいは肺生検により確定診断のついた抗GM-CSF自己抗体陽性の特発性肺胞蛋白症患者をスクリーニングした。各施設の倫理委員会でプロトコールを承認後、患者の同意を得て、16年度は8名の患者をエントリーした。吸入方法としては、250 microgram/dayを8日間ジェットネブライザーで吸入し、6日間休薬というサイクルを12週間行い、その後125 microgram/dayを4日間ジェットネブライザーで吸入し、10日間休薬というサイクルを12週間行った。
結果と考察
今回極めて変則的なプロトコールを立て実施ししたが、結果は62.5%の有効率ということで、15年度のプロトコールを劇的に改善させるに至らなかったが、今後に期待が持てる結果であった。現状の問題点としては、1例治療するのに120万円ものGM-CSFがかかるのを如何にコストを下げるかという問題がある。このため、我々は、吸入器を改良するなどの工夫を行っていく必要があるだろう。
結論
今年度の治療研究を終えて得られた知見を以下にまとめた。
① 無治療経過観察により、自然寛解した患者は皆無であった。
② 本臨床試験の有効率は62.5%(8例中5例)であった。
③ 15年度同様、治療反応群と無効群の2群にはっきりと分かれた。
結論
8例の重症特発性肺胞蛋白症をGM-CSF吸入療法により治療し、62.5%の有効率を得た。
健康危険情報として、GM-CSF吸入による副作用、弊害は確認できなかった。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200400237B
報告書区分
総合
研究課題名
GM-CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中田 光(新潟大学医歯学総合病院生命科学医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 宏一郎(国立国際医療センター)
  • 貫和 敏博(東北大学加齢医学研究所)
  • 慶長 直人(国立国際医療センター)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主任研究者は1999年に、病因物質として患者の肺及び血液中に抗顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF) 中和自己抗体が大量に存在することを発見し、その検出法の特許を出願した。我々は、GM-CSFを吸入で投与することを思い立ち、2001年以降、重症患者3例にGM-CSF吸入療法を試み、呼吸機能が劇的に改善すること、また、肺胞洗浄液中の自己抗体が消失することを確認した。本研究では、GM-CSF吸入療法が重症特発性肺胞蛋白症の治療に有効であるか、また安全に施行しうるかどうかを多施設で行い、最適な治療レジメンを見出すことを目的としている。
研究方法
試験方法の概要:
a) 無治療観察期間:12週間、無治療で観察する。6週、12週において後述する観察項目について検討する。b) 治療期間:プロトコールは3種類行った。
プロトコール1:(250mg/day x7 days+休薬7日間)x12cycles 、ジェットネブライザーで吸入。
プロトコール2:(125mg/day 連日12週間、ジェットネブライザーで吸入
プロトコール3:(250mg/day 連日8日間+休薬6日間)x6cycles+(125mg/day連日4日間+休薬10日間)x6cycles、ジェットネブライザーで吸入
④多施設試験方法:中央登録方式による6施設共同オープン試験
⑤主たる評価項目 無治療観察期間:自然寛解の有無 治療期間:治療前に対する治療6週、12週後の肺胞―動脈血酸素分圧較差の改善が10 mmHg 以上のものを有効とし、未満を無効。
結果と考察
パイロットスタディーで治療した3例では全例改善し、動脈血酸素分圧の上昇が平均25mmHgと顕著であったのに対し、15年の多施設共同プロトコールによる治療研究では、有効率は50%に留まり、かつ有効例の動脈血酸素分圧の上昇も17 mmHgと低かった。16年度にはこの点を改良し、治療期間を24週とし、薬用量は抑えた。その結果現在までに治療終了5例中3例で有効ないしは著効という成績を得ている。以上のことから、治療期間の長さが重要な要素であることが示唆された。3年間の臨床試験により有効性が確定したので、GM-CSFの吸入効率を上げるなどのコスト削減の方策を練りたい。また、どのような症例に適応があるかというeligibilityも今後の課題である。GM-CSFの薬効機序であるが、患者検体を用いた解析が進みつつあり、近い将来明らかにされるであろう。
結論
重症特発性肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入療法の有効性安全性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-