高次脳機能障害診断のための経頭蓋磁気刺激による誘発脳波計測システム等の開発

文献情報

文献番号
200400227A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害診断のための経頭蓋磁気刺激による誘発脳波計測システム等の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山内 繁(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中島八十一(国立身体障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 上野 照剛(東京大学大学院医学系研究科)
  • 三木 幸雄(京都大学医学部付属病院放射線部助手)
  • 鎗田 勝(日本光電工業(株)研究開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 身体機能解析・補助・代替機器開発研究【社】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
95,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
器質的脳疾患により高次脳機能障害をもった患者の高次脳機能を客観的に、また個別に診断・評価を可能にする神経生理学的方法として経頭蓋磁気刺激(TMS)による誘発脳波計測システムを開発する。この装置を用いた高次脳機能障害の診断法を確立する。
研究方法
1.健常者での多チャンネル同時記録のTMSによる誘発脳波の記録方法確立及び高次脳機能障害者での臨床データの蓄積
2.ラットを用いた磁気刺激の生体影響の調査、特に海馬における組織学的変化への影響の検討
3.健常者と高次脳機能障害における拡散テンソルMRI法における線維連絡描出の確立
4. TMSに対応可能な高性能増幅器の試行的作成
倫理面への配慮:大前提として、すべての研究は所属する施設の倫理委員会の承認を経て実施される。
結果と考察
TMSによる短潜時誘発脳波(潜時100ms以内)を記録する方法が生理学的に確立され、P25、N40、P55の3成分から成っることが確認された。これらの短潜時誘発成分が最も明瞭に同定できる至適刺激強度は0.6MTであった。
海馬における長期増強現象(LTP)に対する磁気刺激の影響として、磁気刺激強度が0.50Tおよび1.00TではLTPに変化はなく、0.75TではLTPが有意に増強した。刺激強度が安全性に直結することが確認された。また、磁気刺激により脳虚血耐性の獲得が確認され、治療への応用が期待されることが明らかにされた。
3T 装置の高い神経線維束描出能力を生かして錐体路、上縦束・弓状束、前頭橋路、脳弓、視放線、脊髄視床路などの機能に関連した線維束を良好に描出できることが確認され、その方法が確立された。
マルチチャンネル誘発脳波計試作機を作成しによるノイズ除去性能を確認した。プリント基板のパターン間の浮遊容量などにより、磁気刺激アーチファクトが回路間を通過し、低域遮断回路のコンデンサにアーチファクトがチャージされることが原因と考えられた。
結論
TMSによる短潜時誘発脳波の記録が可能になり、記録のための生理学的要件ならびに機器側の要件が明らかにされた。また、磁気刺激自体がもつ危険性とそこから必然的に推定される安全性が明らかにされた。さらに磁気刺激がもつ治療効果も明らかにされた。3TのMRI機を用いた形態学的検査からは個別神経連絡を描出する方法が確立された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-