既存薬剤の副作用に関与する遺伝子の探索技術の開発

文献情報

文献番号
200400223A
報告書区分
総括
研究課題名
既存薬剤の副作用に関与する遺伝子の探索技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
柳川 弘志(慶応義塾大学理工学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
24,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤相互作用蛋白質の網羅的にスクリーニング(プロテオーム解析)は、既存薬剤の副作用機序の解明に大きく役立ち、未知の副作用発現の予測も可能になると期待される。本研究は、筆者らが開発してきた、蛋白質とそれをコードするRNAを対応付ける手法であるin vitro virus (IVV) 法を用いて薬剤の標的蛋白質をスクリーニングするための技術開発を行うものである。
研究方法
アフィニティ樹脂に固定するためのビオチンリンカーを導入した、イレッサ(Ire-1, Ire-2)、サリドマイド、およびレチノイド誘導体(Am80, Ch55)をアビジンアガロースに固定し、それらを用いたIVVライブラリーのスクリーニングを行った。スクリーニング後、各薬剤を固定したアフィニティ樹脂に結合したIVVを回収し、RNA部分を逆転写PCRした。得られたcDNAのクローニング後、塩基配列解析を行い、各薬剤に結合した蛋白質を同定した。
結果と考察
Ire-1とIre-2をベイトに用いた、IVVライブラリーのスクリーニングでは、TRPC4と呼ばれる蛋白質をコードするRNAの一部分しか濃縮されなかった。そこで、IVVライブラリーの作製において、特定遺伝子を除去する方法を開発し、TRPC4を含まないライブラリーを作製した。その後のスクリーニングの結果、Ire-1とIre-2の両者に結合する可能性がある20種の蛋白質を見出した。サリドマイドをベイトに用いたスクリーニングでは、サリドマイドに結合する可能性がある18種の蛋白質を見出した。この中にはDNA修復や転写に関与する蛋白質が含まれ、副作用である催奇性との関連に興味が持たれる。レチノイド系薬剤は疎水性が高いので、非特異的吸着を減少できる核酸部分を2本鎖化したIVVライブラリーを使用し、スクリーニングを行った。その結果、Am80とCh55誘導体に結合する蛋白質を1種同定した。この蛋白質は、マウスの感覚受容体と相同性を示し、レチノイドとの結合による生物活性の発現と副作用の関連に興味が持たれる。
結論
副作用機序未知の医薬品である、イレッサ、サリドマイド、およびレチノイド誘導体と相互作用する蛋白質のスクリーニングを行い、新たな結合蛋白質候補を同定した。以上の結果より、トキシコゲノミックス(プロテオミックス)の手法としての、IVVを用いた網羅的な薬剤結合蛋白質解析技術を開発することができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200400223B
報告書区分
総合
研究課題名
既存薬剤の副作用に関与する遺伝子の探索技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
柳川 弘志(慶応義塾大学理工学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤と相互作用する蛋白質を網羅的にスクリーニング(プロテオーム解析)することが可能になれば、既存薬剤の副作用機序の解明に大きく役立ち、未知の副作用発現の予測も可能になると期待される。本研究は、筆者らが開発してきた、蛋白質とそれをコードするRNAを対応付ける手法であるin vitro virus (IVV) 法を用いて薬剤の標的蛋白質をスクリーニングするための技術開発を行うものである。
研究方法
アフィニテイ樹脂に固定するためのリンカー分子を導入した薬剤誘導体の合成とIVVライブラリーの作製法の検討を行った。そして、FK506をベイトに用いた、スクリーニングの条件検討を行った。その後、イレッサ、サリドマイド、およびレチノイド誘導体をベイトに用いたスクリーニングを行い、各薬剤に結合した蛋白質を同定した。
結果と考察
FK506、イレッサ(2種、Ire-1, Ire-2)、サリドマイド、およびレチノイド誘導体(Am80, Ch55)にビオチン化リンカーを分子を導入した薬剤誘導体を合成した。IVVライブラリーの作製法の検討を行った結果、in vitro のみの手法を用いると、市販mRNAより遺伝子の多様性を保持したライブラリーを得ることができた。FK506をベイトにしたスクリーニングで、FKBP-12のIVVの選択的濃縮を確認した。以上より、IVV法を用いた薬剤と相互作用するプロテオーム解析が、実現可能であることをモデル系で示すことができた。副作用機序未知の医薬品である、イレッサ(Ire-1, Ire-2)、サリドマイド、およびレチノイド誘導体(Am80, Ch55)をベイトにしたIVVスクリーニングを行い、新たな結合蛋白質候補を見出した。これらの蛋白質と薬剤が相互作用することにより、起きる生命現象を研究することにより、各薬剤の副作用機序が解明される可能性がある。
結論
IVVスクリーニングのために必要な材料の作製法およびスクリーニング条件を確立した。副作用機序未知の医薬品である、イレッサ、サリドマイド、およびレチノイド誘導体と相互作用する蛋白質のスクリーニングを行い、新たな結合蛋白質候補を同定した。以上の結果より、トキシコゲノミックス(プロテオミックス)の手法としての、IVVを用いた網羅的な薬剤結合蛋白質解析技術を開発することができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-