医薬品等の毒性試験に用いるストレス遺伝子チップの開発

文献情報

文献番号
200400221A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等の毒性試験に用いるストレス遺伝子チップの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究提案は、様々なストレス遺伝子を様々な生物種において同定してきたという我々の実績の基に(ヒトに関しては既にストレス遺伝子チップの試作品を開発している)、様々な生物種において様々な方法でストレス遺伝子を同定し、ストレス遺伝子チップを各生物種において作成することを目標にしている。また大腸菌、及び酵母などを使うことによって、単にストレスによって誘導される遺伝子だけでなく、細胞をストレス耐性化する遺伝子を遺伝学的手法を用いて網羅的に検索するのも本研究の特徴の一つである。それら遺伝子(及びそのホモログ)をストレス遺伝子チップに使用するだけでなく、このシステムを用いた全く新しい毒性試験の確立も本研究で目指したい。
研究方法
NSAIDs誘導性遺伝子の検索:昨年度までの本研究で開発したストレス遺伝子チップを使って、NSAIDs誘導性遺伝子の検索を行った。NSAIDs潰瘍発症機構の解明:ラットを用いて、新しい実験動物モデルを確立し、動物実験を行った。NSAIDsによるアポトーシス誘導機構モルモット胃粘膜初代培養細胞を用いて、各種阻害剤の効果などを調べた。
結果と考察
胃粘膜細胞をNSAIDsで処理し、誘導される遺伝子をストレス遺伝子チップを使って網羅的に解析した。その結果GRP78など、小胞体ストレス応答(小胞体が傷害を受け小胞体内に変性した蛋白質が蓄積すると誘導されるストレス応答)に関与する遺伝子を複数同定し、NSAIDsが小胞体ストレス応答を誘導することが初めて分かった。最近小胞体ストレス応答誘導により、アポトーシス誘導性を持つ転写因子CHOPが誘導されることが報告された。そこで我々はNSAIDsによるアポトーシス誘導がCHOPを介する可能性を考え実験を行った。まずCHOPのドミナントネガティブ変異蛋白質を発現することにより、NSAIDsによるアポトーシス誘導が抑制されることを見出した。さらに、CHOPのノックアウトマウスから調製した細胞では、NSAIDsによるアポトーシス誘導が全く見られないことを示した。以上の結果は、NSAIDsは小胞体ストレス応答(CHOP)を誘導することにより、アポトーシスを起こすことを示唆している。
結論
本研究により、医薬品により誘導される遺伝子の解析が医薬品の副作用機構の解明、及び副作用のない新しい医薬品開発に役立つことが示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200400221B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品等の毒性試験に用いるストレス遺伝子チップの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究提案は、様々なストレス遺伝子を様々な生物種において同定してきたという我々の実績の基に(ヒトに関しては既にストレス遺伝子チップの試作品を開発している)、様々な生物種において様々な方法でストレス遺伝子を同定し、ストレス遺伝子チップを各生物種において作成することを目標にしている。また大腸菌、及び酵母などを使うことによって、単にストレスによって誘導される遺伝子だけでなく、細胞をストレス耐性化する遺伝子を遺伝学的手法を用いて網羅的に検索するのも本研究の特徴の一つである。
研究方法
各生物種(ヒト、マウス、イネ、酵母、大腸菌)でストレス遺伝子の同定を行った。また、本研究で開発したストレス遺伝子チップを使って、NSAIDs誘導性遺伝子の検索を行った。ラットを用いて、新しい実験動物モデルを確立し、動物実験を行った。
結果と考察
大腸菌で12、酵母で15、ヒトで63の新しいストレス遺伝子を単離した。またこれまで我々が同定してきた遺伝子を含む、ヒトの全てのストレス遺伝子を網羅した改良型ストレス遺伝子チップを作成した。またこれを用いて、臨床現場で問題になっているNSAIDsの副作用である、NSAIDs潰瘍の発症機構の解明を行った。具体的には、NSAIDs潰瘍の発症に、NSAIDsによる細胞傷害作用(NSAIDsによるCHOP遺伝子の誘導による)が関与していること、及びそれがNSAIDsの膜傷害性に依存していることを明らかにした。
 またある物質(医薬品の候補化合物など)に対して細胞を耐性化する遺伝子を同定することにより、その物質の細胞毒性の分子機構を解明するという方法で、NSAIDsの細胞毒性に与る新しい遺伝子、TPO1を発見した。さらにそのヒトホモログであるTETRANを同定し、それがヒト細胞をNSAIDsに耐性化することを見出した。またそのメカニズムとして、TETRANが細胞外へNSAIDsを排出していることを発見した。
結論
本研究により、医薬品により誘導される遺伝子の解析が医薬品の副作用機構の解明、及び副作用のない新しい医薬品開発に役立つことが示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-