化学物質の胎盤ホルモン産生系・代謝系への影響に関する研究

文献情報

文献番号
200400217A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の胎盤ホルモン産生系・代謝系への影響に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中西 剛(大阪大学大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、医薬品などの化学物質の標的臓器として胎盤に注目し、化学物質による胎盤機能修飾が与える胎児へ影響をin vitroおよびin vivo双方について検討を行うことで、そのin vitroの結果から発生毒性の予測が可能な評価系の構築を最終目標としている。本年度は、胎盤における任意の遺伝子変動が発生過程に与える影響をin vivoにおいて検討する目的で、1)改変型アデノウイルスベクター(mAd)を用いた胎盤特異的遺伝子発現系の構築と発生毒性評価への応用の可能性について検討を行った。またこれとは別に2)胎盤特異的コンディショナルトランスジェニック(Tg)マウスを作成し、検討を行った。
研究方法
発現させる分子としては、エストロゲン産生にもっとも重要な分子の一つであるアロマターゼを選択した。1)齧歯類胎盤に特異的発現する胎盤性ラクトゲンのプロモーター領域を上流に連結したルシフェラーゼ(LUC)発現遺伝子(PL-LUC)を作成し、これらをウイルスのファイバー部分にRGD配列を持たせたRGDmAdに組み込んで検討を行った。2)PLプロモーターを用いて、胎盤特異的にEGFPヒトアロマターゼ(EGFP-Arom)融合蛋白質を発現するTgマウスを作成した。
結果と考察
PL-LUCを搭載したRGDmAdは、in vitroにおいては、胎盤細胞特異的な発現を示したが、妊娠マウスを用いたin vivoでの検討では、いずれのRGDmAdを投与したマウスともに胎盤でのLUC活性は確認できなかった。Tgマウスはfounderマウスを出産し、それぞれTG738とTG739の2系統を得た。ジェノタイピングの結果TG738マウスにおいては、雄39匹中5匹、雌31匹中10匹の陽性マウスがそれぞれ確認できた。一方でTG739マウスにおいては、雄50匹中11匹、雌56匹中8匹の陽性マウスがそれぞれ確認できた。
結論
RGDmAdを用いた評価系においては、用いたプロモーターの活性が弱い上、RGDmAdを用いた胎盤での遺伝子導入も十分とは言えない結果となった。RGDmAdに代わる遺伝子導入系の開発が必要であると考えられる。またTgマウスについては、現在、これらのマウスにおける各組織でのEGFP-Aromの発現とフェノタイプについて検討中である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200400217B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質の胎盤ホルモン産生系・代謝系への影響に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中西 剛(大阪大学大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、化学物質の標的臓器として胎盤に注目し、化学物質による胎盤機能修飾が与える胎児へ影響をin vitroおよびin vivo双方について検討を行うことで、そのin vitroの結果から発生毒性の予測が可能な評価系の構築を最終目標としている。本研究では、ヒトと実験動物の胎盤の種差に着目し、化学物質により変動する遺伝子群を検索し、その遺伝子群の変動によるフェノタイプを検討するための評価系の構築と胎児への影響を検討し、発生毒性評価を可能とするデータベースの構築を目指す。
研究方法
1)ラットとヒトの胎盤細胞に種々の化学物質を添加して、リアルタイムRT-PCR法で内分泌系の遺伝子群の変動を検討した。2)胎盤における任意の遺伝子変動が発生過程に与える影響をin vivoにおいて検討する目的で、改変型アデノウイルスベクター(mAd)を用いた胎盤特異的遺伝子発現系の構築と発生毒性評価への応用の可能性について検討を行った。3)ヒト胎盤細胞において化学物質で発現変動が確認されたアロマターゼを胎盤特異的に発現させたコンディショナルトランスジェニック(Tg)マウスを作成し、検討を行った。
結果と考察
同じ化学物質をラットとヒトの絨毛細胞株に作用させた場合、その遺伝子発現パターンは異なっていた。またヒトおよび齧歯類のそれぞれの胎盤に特異的に発現している分子についても発現変動が認められ、胎盤に対する化学物質の影響に明らかな種差が確認された。そこで従来型の発生毒性試験とは異なり、遺伝子発現変動によるフェノタイプを直接検討可能な胎盤毒性評価系の構築を、mAdを用いて試みた。その結果、ウイルスファイバー部分にRGD配列を持たせることでmAdの胎盤指向性は上昇するものの、胎盤特異的プロモーターと組み合わせた遺伝子導入系では十分な遺伝子発現は確認できなかった。一方で、Tgマウスはfounderマウスを出産し、2系統のマウスを得た。
結論
化学物質の胎盤に対する影響には明白な種差があり、齧歯類を用いたin vivo発生毒性試験でヒトの発生毒性を評価するには不十分であることが示された。RGDmAdを用いたin vivo毒性評価系においては、RGDmAdによる胎盤への遺伝子導入効率が不十分であり、本系に代わる遺伝子導入系の開発が必要である。またTgマウスについては、現在、各組織でのアロマターゼ発現とフェノタイプについて検討中である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-10
更新日
-