細胞結合配列を用いた易吸収性ペプチド製剤の設計

文献情報

文献番号
200400207A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞結合配列を用いた易吸収性ペプチド製剤の設計
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 明(国立保健医療科学院口腔保健部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,835,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、生理活性を持った様々なペプチドが報告され、薬剤としての応用が期待されている。ワクチンの分野においても、ペプチドは必要最小限のエピトープに対する免疫を誘導でき、安全性が高いことから、新しいタイプの感染防御ワクチンやガン細胞のみを攻撃させるガンワクチンとしての開発が行われている。しかし、ワクチンとして用いるためには抗原性が弱いという致命的な欠陥がある。そこで、リポソームなどのベクターを用いてペプチドを免疫するというアプローチが考えられ、様々なベクターの研究開発が精力的に行われている。これに対し、本研究ではペプチド製剤そのものに生体組織への親和性、選択性を持たせ、ペプチドの免疫原性を高めることを目的としている。これに成功すればワクチン以外のペプチド製剤に関しても、その有効性を高め使用濃度を下げられる可能性がある。将来は鼻からペプチド溶液を滴下あるいは噴霧するだけで免疫誘導可能になり、手軽に感染予防やガン予防あるいは治療が可能になるかもしれない。
研究初年度は、以前発見した細胞結合配列の効果についてモデルペプチドワクチンを用い確証を得ること、具体的な疾患を含めた様々なペプチド配列に対しての一般性を確認すること、さらには細胞生物学的な実験を行い細胞への結合、取り込みが行われているか確認を行うことを目的とした。また、ペプチドの製造法にも適用可能な、タンパク質の生物学的生産方法に関して若干の検討も行う。
研究方法
モデルとして、う蝕病原菌由来のペプチド等をモチーフにしたペプチドを合成し、これを用いてマウスの免疫実験を行う。また、マウス培養細胞を用いてペプチドの作用を解析する実験系の構築を検討する。
結果と考察
マウス免疫実験によりペプチドの基本設計、N末端から「細胞結合配列-T細胞エピトープ-リジンリンカー-B細胞エピトープ」というアミノ酸配列とする、が様々なペプチドで有効であることの確証を得た。ペプチドの鼻腔免疫の実用化に近づいたと考えられる。
結論
細胞結合配列を付加することで、ペプチドの免疫原性は増強され、さらに、細胞結合配列をもつペプチドは鼻腔粘膜への投与によって血清抗体を誘導可能になる。実用的なペプチドワクチンの開発のためにはヒト用のT細胞エピトープの決定が必要であり、そのためには製薬会社等を含めた共同研究の実施等も視野に入れて研究を推進したい。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-