ピンポイントデリバリー用バイオナノキャリアの開発とがん遺伝子治療への応用

文献情報

文献番号
200400188A
報告書区分
総括
研究課題名
ピンポイントデリバリー用バイオナノキャリアの開発とがん遺伝子治療への応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昭彦(神戸大学工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 黒田俊一(大阪大学産業科学研究所)
  • 妹尾昌治(岡山大学大学院自然科学研究科)
  • 上田政和(慶応大学医学部)
  • 平岡真寛(京都大学医学部)
  • 近藤科江(京都大学医学部)
  • 山本健二(国立国際医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
53,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)外皮タンパク質(Lタンパク質)から形成されるL粒子を改良して分子標的療法のキャリアとなる中空バイオナノ粒子を確立するとともに、それを用いたがんの遺伝子治療法を開発する。対象とするがんとしては、改良型L粒子を直接利用可能な肝細胞がんと、特異性変換が必要な脳腫瘍を選び、検討する。中空バイオナノ粒子の高い標的性を利用すれば、多臓器への転移がんを網羅的に治療できると期待される。
研究方法
L粒子がヒト肝細胞に高い標的化能力を持つ「中空バイオナノ粒子」であることに注目し、生体内でピンポイントに遺伝子や薬物送達が可能なナノキャリアとして利用することを検討した。さらに、肝細胞特異的なレセプター部を他の特異性を持つレセプターに変換して、任意の臓器にピンポイント送達すことを試みた。本研究では、L粒子を改良して分子標的療法のキャリアとなる中空バイオナノ粒子を確立するとともに、それを用いたがん遺伝子治療について検討した。
結果と考察
酵母を用いた生産と超遠心分離による精製法の開発により、平均粒子径 100nmの精製L粒子を効率よく得ることができた。さらにLタンパク質の14個のシステイン残基の内、8個まで置換してジスルフィド結合のシャッフリングを抑制することで、L粒子構造を大幅に安定化できた。得られた改良型L粒子に遺伝子や薬剤をエレクトロポレーションで封入することで、肝細胞のみに特異的かつ効率的に遺伝子や薬剤の導入を行うことができた。さらに、Lタンパク質の肝細胞認識領域を他のサイトカインやリガンドに置換することで、任意の標的細胞へターゲッティングする(リターゲッティング)ための基盤を開発した。また、脳内へのデリバリー可能なL粒子を創製するために、リジンとトリプトファンを組み合わせた新規PTD3配列を見出した。一方、免疫系に対するステルス化を行ううえで、HBVエスケープミュータントの配列の利用が有望であることを明らかにした。さらに、がん遺伝子治療への応用を目指して、可溶性VEGF受容体遺伝子封入L粒子の抗腫瘍性効果を検討した結果、可溶性VEGF受容体の標的細胞での発現は、有効な抗腫瘍性効果を示すことが明らかとなった。
結論
中空バイオナノ粒子を分子標的用のナノキャリアとして利用するための基盤を集積するとともに、がん遺伝子治療に向けた基礎的な知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2005-06-02
更新日
-