ヒト胎児組織の供給システムのあり方と胎児組織提供コーディネーターの役割に関する研究

文献情報

文献番号
200400179A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胎児組織の供給システムのあり方と胎児組織提供コーディネーターの役割に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 真理子(信州大学(医学部保健学科))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎児組織の研究利用に関する各国の規制状況を調査・検討する。
研究方法
文献調査と関係者へのヒアリングによる。
結果と考察
中絶と胎児研究の倫理を、被験者保護のための全米委員会の議論(1974)をてがかりとして歴史文化的に、また、胎児組織移植を受ける側の苦悩という観点から患者ケアのあり方として、それぞれ検討した。また、16年度に引き続き、各国の規制状況に関して次の資料を翻訳・紹介した。○胚性、胎児性組織を治療、臨床用途に用いるための指針(国際産科婦人科連合)、○倫理的・法的事項に関する審議会の現在の見解(アメリカ医師会)、○アメリカ合衆国の胚および胎児研究に関する各州の制定法、○アメリカ合衆国のヒト・クローニングに関する各州の制定法、○胎児および胎児由来試料の研究利用に関する手引きの検討(イギリス保健省)、○イギ潟Xにおけるヒト臓器・組織の研究利用に関する立法提案について(イギリス)、○人間の身体、わたしたちの選択-イングランドとウェールズにおける人間の臓器と組織についての法律に関する審議会報告(イギリス保健省)、○胎児の遺骸すべての配慮ある処分-看護師と助産師に対するガイダンス(イギリス王立看護協会)、○胎児細胞および胎児組織の利用に関する指針(ドイツ連邦医師会)、○人の脳への神経細胞の移植(ドイツ連邦医師会中央倫理委員会)、○胎児組織法(オランダ)、○人間の胚と胎児或いはその細胞、組織、臓器の提供および利用に関する法(スペイン)。
結論
本年度さらに詳細に各国の規制状況を調査し、(1)明文化された規定の原型とも言えるピール綱領以来、現在に至るまで続けられているイギリスでの一連の議論から、胎児組織の研究利用問題は、他のヒト組織利用も含めて包括的に検討するに値する重大な問題であること、(2)アメリカでの裁判例や英国王立看護協会の取り組みなどから、胎児組織の利用に当たっては、その前提となる胎児の亡骸の処分について、必要な行動指針を示すことが必要であること、(3)ドイツおよびスイスの例から、規制に実効性を持たせるためには、倫理委員会による審査だけではなく、実際の現場に関わる仲介機関の設置が有効であること、等が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-11-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200400179B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト胎児組織の供給システムのあり方と胎児組織提供コーディネーターの役割に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 真理子(信州大学(医学部保健学科))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎児組織の研究利用に関する各国の規制状況を調査・検討する。
研究方法
文献調査と関係者へのヒアリングによる。
結果と考察
胎児組織の規制状況に関して各国の法令、指針、報告書、あるいは国際組織によるそれらを、網羅的に収集し、翻訳・紹介した。また、裁判例としては次のものを紹介した。○アメリカ合衆国の凍結胚の使用・保管・処分に関する各州の制定法および判例、○アメリカ合衆国の胎児殺に関する各州の制定法および判例、○「胎児を使用する実験」を禁止する州法を違憲とした連邦裁判所判決、○女性に胎児の遺骸の処分に関する選択肢を示すことと人工妊娠中絶の権利侵害に関する連邦裁判所判決、を紹介した。また、海外で用いられているインフォームドコンセント書式を翻訳・紹介した。コーディネーターに関しては、ヒト胚提供のコーディネーター(オーストラリア)や、子どもを亡くした親に組織提供を依頼する際のコーディネーター(イギリス)の存在、スイス医師会の規定におけるコーディネーター・オフィスに関する記述は確認できたものの、胎児組織に特化した業務を行っているコーディネーターのモデルは見当たらなかった。なお、イギリスでは新しい人体組織法(Human Tissue Act)制定にあわせて人組織管理局(Human Tissue Authority)の設置が決定されており(2004)、今後の動向が注目される。これらの調査結果は、今後広く関係者に利用していただく便宜を考え、報告書の巻末で一覧表として掲載するとともに、主任研究者のホームページ(http://square.umin.ac. jp/~mtamai/)でも近日中に公開される予定である。
結論
現在本邦においては、厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会において「ヒト幹細胞等を用いる臨床研究指針(案)」が検討されている。平成15年12月12日(12:30?15:00)に行われた同専門委員会第16回委員会(経済産業省別館827号会議室)に主任研究者(玉井)が招聘され、ヒト胎児組織の研究利用に関する各国の規制状況について小講演を行った。平成17年4月現在、審議の行方は、幹細胞の臨床研究にとどまらず胎児組織全体を視野に入れた包括的な国レベルでのルールづくりに向かっており、この方向性は当研究班が各国の規制状況等を網羅的に調査した上で示したものでもある。今後の検討にも十分に活用されうる基礎資料を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2005-11-04
更新日
-