幹細胞機能のエンハンスメントによる非破壊的造血幹細胞移植法の確立

文献情報

文献番号
200400094A
報告書区分
総括
研究課題名
幹細胞機能のエンハンスメントによる非破壊的造血幹細胞移植法の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中内 啓光(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 智(東京大学医科学研究所)
  • 岩間 厚志(千葉大学医学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Lnkはc-Kitの下流に位置し、そのシグナルを抑制的に制御する機能を持つアダプター分子である。Lnk遺伝子を破壊したLnkノックアウトマウス (Lnk KO) においては造血能が亢進していることが示されている。そこで本研究では、Lnk KOマウスにおける造血能の亢進の詳細を明らかにするとともに、Lnkを分子標的とした造血幹細胞操作法により正常造血幹細胞に選択的増殖優位性を付与し最小限の前処置で骨髄移植を可能にする方法の開発を目指す。
研究方法
SCF依存性に増殖する細胞株にLnkを強制発現させ、そこにLnkの機能抑制のためのsiRNAあるいはドミナントネガティブLnk変異体を導入してそのドミナントネガティブ効果、すなわち内在性に発現するLnkの機能を阻害する能力を細胞増殖を指標に検討した。また、実際にドミナントネガティブLnk変異体を造血幹細胞に導入して移植を行い、造血幹細胞の機能エンハンスメント効果を解析した。
結果と考察
種々のLnk変異体のドミナントネガティブ効果を検討したところ、SH2変異に加えて、PHドメイン欠損、C末端領域欠損を組み合わせることにより、より効率の良いドミナントネガティブLnk変異体として作用することがわかった。一方、Lnkに対するsiRNAの効果はほとんど見られなかった。得られたドミナントネガティブLnk変異体をレトロウィルスベクターを用いてマウス骨髄造血幹細胞に感染導入した後、放射線照射したマウスへ移植したところ、造血系再構築能を著明に増強しうることを確認した。
結論
ドミナントネガティブLnk変異体を応用することにより正常造血幹細胞に選択的増殖優位性を付与し最小限の前処置で骨髄移植を可能にする本研究の目的の一つが達成されたものと判断された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200400094B
報告書区分
総合
研究課題名
幹細胞機能のエンハンスメントによる非破壊的造血幹細胞移植法の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中内 啓光(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高木 智(東京大学医科学研究所)
  • 岩間 厚志(千葉大学医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Lnkはc-Kitの下流に位置し、そのシグナルを抑制的に制御する機能を持つアダプター分子である。Lnk遺伝子を破壊したLnkノックアウトマウス(Lnk KO)マウスにおいては造血幹細胞の数が増加しているだけでなく、正常マウス由来の造血幹細胞よりも強い造血能を持つことが示されている。そこで本研究では、Lnk KO における骨髄造血活性の亢進を解析し、これを造血幹細胞の機能エンハンスメントに利用することを目的とした。
研究方法
Lnk KOマウスにおける造血能をcompetitive repopulation assayを基本にしたRepopulation Unit (RU)ならびにCompetitive Repopulation Unit (CRU)によって測定した。また、Lnkを分子標的とした造血幹細胞操作を目指し、Lnkの機能抑制のためにドミナントネガティブLnk変異体を開発し、造血幹細胞移植における効果を解析した。
結果と考察
Lnk KOマウスでは造血幹細胞の数(CRU)ばかりでなく、個々の造血幹細胞の持つ造血能(RU)も増加していた。Lnkの機能抑制のためにドミナントネガティブLnk変異体を開発したところ、SH2変異に加えて、PHドメイン欠損、C末端領域欠損を組み合わせることにより、より効率の良いドミナントネガティブLnk変異体として作用することがわかった。得られたドミナントネガティブLnk変異体をマウス骨髄造血幹細胞・前駆細胞に感染導入した後、放射線照射したマウスへ移植したところ、造血系再構築能を著明に増強しうることを確認した。さらに、ドミナントネガティブLnk変異体のプラスミドDNAによる一過性発現によっても非骨髄破壊的移植条件下で免疫不全マウスのリンパ球コンパートメントを効率よく再建できることを明らかにし、ドミナントネガティブLnk変異体を応用することにより正常造血幹細胞に選択的増殖優位性を付与し最小限の前処置で骨髄移植を可能にする本研究の目的の一つが達成されたものと判断された。
結論
Lnkが造血幹細胞の自己複製を負に制御していることから、Lnkの機能発現を制御することによって造血幹細胞機能のエンハンスメントが可能となり、より安全で簡便な造血幹細胞移植法の確立に結びつくものと考えられた。今後は、ヒト造血幹細胞の系で検討するとともに、より安全で効率の良いドミナントネガティブLnk変異体のデリバリー法の検討、Lnkを標的とした低分子化合物の開発を進めていくこと、などが臨床へのトランスレーションを進める上で重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-