組織工学を応用した培養皮膚の実用化に向けた研究

文献情報

文献番号
200400087A
報告書区分
総括
研究課題名
組織工学を応用した培養皮膚の実用化に向けた研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
黒柳 能光(北里大学医療衛生学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 宏(北海道大学医学部)
  • 真鍋 求(秋田大学医学部)
  • 百束 比古(日本医科大学医学部)
  • 熊谷 憲夫(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 鳥居 修平(名古屋大学医学部)
  • 宮地 良樹(京都大学医学部)
  • 古川 福実(和歌山県立医科大学医学部)
  • 上田 晃一(大阪医科大学医学部)
  • 森口 隆彦(川崎医科大学医学部)
  • 古江 増隆(九州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
32,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種培養真皮は、他人の皮膚由来の線維芽細胞を使用するため永久生着はしない。しかし、産生される種々の細胞成長因子により創傷治癒を促進する。それゆえ、難治性皮膚潰瘍や重症熱傷の治療に有効である。本研究は、同種培養真皮の多施設臨床研究を展開して実用化の基盤を構築することを目的とする。
研究方法
同種培養真皮は、他人の皮膚由来の線維芽細胞をコラーゲンとヒアルロン酸の2層構造スポンジに播種して1週間培養した後、凍結保存される。凍結状態で各医療機関に搬送して凍結保存され、臨床使用する際に解凍して適用される。マスターセルおよびワーキングセル作成用の皮膚の入手ならびに培養真皮の臨床試験に関しては、各医療機関の倫理委員会の承認を受け、同意書に基づいて行った。北里大学医療衛生学部人工皮膚研究開発センターで製造した同種培養真皮を使用して、平成16年度は全国26の医療機関において多施設臨床研究を推進した。培養真皮の製造記録書と各施設で作成した臨床研究記録書は、人工皮膚研究開発センターに保管し、必要に応じて開示できる状態にしてある。
結果と考察
同種培養真皮は、解凍後も創傷治癒促進に重要な各種サイトカイン(VEGF, bFGF, HGF, TGF-β,IL-8)を産生することを培養系で確認した。さらに、これらのサイトカインを含む培養液を使用して、ヒト血管内皮細胞の増殖を促進することを培養系で確認した。平成16年度の多施設臨床研究は、920枚の同種培養真皮を使用し55症例の臨床試験を行った。完成年度を迎え、特に、重症熱傷患者の救命を目的とした症例に重点をおいて有用性を明らかにした。広範囲重症熱傷患者に対して大量の同種培養真皮を適用した。90%の症例において、「極めて有用」、「有用である」の臨床評価であった。
結論
凍結保存した同種培養真皮は、解凍後も創傷治癒促進に重要な細胞成長因子、特に、血管新生を促進する成長因子を産生する。それゆえ、従来の治療法では難渋する症例に対して顕著な効果が期待できる。本研究は、全国規模の多施設臨床研究を通して、実践的な再生医療の普及を最大の課題としている。本研究は、同種培養真皮の実用化に向けた研究であり、平成16年度は、広範囲重症熱傷患者の多い施設に重点的に同種培養真皮を供給し、重症熱傷患者の救命に有効であることを実証した。

公開日・更新日

公開日
2005-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200400087B
報告書区分
総合
研究課題名
組織工学を応用した培養皮膚の実用化に向けた研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
黒柳 能光(北里大学医療衛生学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉原 平樹(北海道大学医学部)
  • 清水 宏(北海道大学医学部)
  • 真鍋 求(秋田大学医学部)
  • 中島 龍夫(慶応義塾大学医学部)
  • 小川 秀興(順天堂大学医学部)
  • 百束 比古(日本医科大学医学部)
  • 熊谷 憲夫(聖マリアンナ医科大学医学部)
  • 鳥飼 勝行(横浜市立大学医学部)
  • 青山 久(愛知医科大学医学部)
  • 鳥居 修平(名古屋大学医学部)
  • 宮地 良樹(京都大学医学部)
  • 古川 福実(和歌山県立医科大学医学部)
  • 上田 晃一(大阪医科大学医学部)
  • 森口 隆彦(川崎医科大学医学部)
  • 古江 増隆(九州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種培養真皮は、他人の皮膚由来の線維芽細胞を使用するため永久生着はしない。しかし、産生される種々の細胞成長因子により創傷治癒を促進する。それゆえ、難治性皮膚潰瘍や重症熱傷の治療に有効である。本研究は、同種培養真皮の多施設臨床研究を展開して実用化の基盤を構築することを目的とする。
研究方法
同種培養真皮は、他人の皮膚由来の線維芽細胞をコラーゲンとヒアルロン酸の2層構造スポンジに播種して1週間培養した後、凍結保存される。凍結状態で各医療機関に搬送して凍結保存され、臨床使用する際に解凍して適用される。マスターセルおよびワーキングセル作成用の皮膚の入手ならびに同種培養真皮の臨床試験に関しては、各医療機関の倫理委員会の承認を受け、同意書に基づいて行った。北里大学医療衛生学部人工皮膚研究開発センターで製造した同種培養真皮を使用して全国31の医療機関において多施設臨床研究を推進した。培養真皮の製造記録書と各施設で作成した臨床研究記録書は、人工皮膚研究開発センターに保管し、必要に応じて開示できる状態にしてある。
結果と考察
平成12年度~平成16年度に、4760枚の同種培養真皮を各医療機関に供給して415症例の臨床試験を行った。有効症例数404(97.3%)、参考症例数11(2.7%)であった。内訳は、深達性2度熱傷 (15.3%)、3度熱傷 (6.7%)、高倍率自家メッシュグラフトの被覆 (12,1%)、採皮創 (0.8%)、難治性皮膚潰瘍 (47.8%)、外傷性皮膚欠損創 (6.7%)、色素性母斑切除創 (2,7%)、熱傷瘢痕切除創 (2.2%)、腫瘍切除創 (5.7%)であった。総合評価は、極めて有効 (62.6%)、有効である (30.0%)、普通 (6.7%)、有用でない (0.7%)であった。安全性評価は、安全 (89.4%)、ほぼ安全 (8.9%)、安全に疑問あり (1.0%)、安全でない (0.7%)であった。「安全に疑問あり」と「安全でない」は、感染を伴う症例に適用した場合であり、2%以下であることから判断すると、安全性は十分に保証できる。
結論
凍結保存した同種培養真皮は、解凍後も創傷治癒促進に重要な細胞成長因子(VEGF, bFGF, HGF, TGF-β, IL-8)、特に、血管新生を促進する成長因子を産生する。それゆえ、従来の治療法では難渋する症例に対して顕著な効果が期待できる。本研究は、同種培養真皮の実用化に向けた研究であり、幅広い医療従事者に再生医療の重要性を理解して頂くという当初の目標は達成した。

公開日・更新日

公開日
2005-06-10
更新日
-