神経幹細胞を用いた神経変性疾患の治療に関する研究

文献情報

文献番号
200400086A
報告書区分
総括
研究課題名
神経幹細胞を用いた神経変性疾患の治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高坂 新一(国立精神・神経センター・神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 古川 昭栄(岐阜薬科大学 神経分子生物学)
  • 島崎 琢也(慶應義塾大学 医学部)
  • 久恒 辰博(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 高橋 淳(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
54,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、神経幹細胞の増殖分化機構に関する基礎的知識を深めるとともに、神経幹細胞を脳内に移植する、あるいは内在性の神経幹細胞を賦活化しニューロンの新生を促進することにより、神経変性疾患で損傷された神経回路網を再構築させることを最終目標とする。この目標を遂行するため、1)移植細胞として有用と考えられるES細胞の分化誘導法に関する研究、2)内在性神経幹細胞の賦活化に関する研究、3)霊長類を用いた神経幹細胞に関する研究、に焦点を当てて研究を推進した。
研究方法
個々の研究方法に関しては、分担研究報告書を別途参照されたい。
結果と考察
Sox1は神経系細胞に発現し未分化ES細胞には発現していない。そこで、分化誘導後のSox1-GFP knock-in マウスES細胞からGFPの発現を指標に神経系細胞のみを選択し、腫瘍形成の原因となる未分化ES細胞を除去後マウス脳内に移植したところ、これらの細胞は脳内でニューロンに分化し、しかも腫瘍形成は認められなかった。内在性神経幹細胞の賦活化に関して、NMDA受容体阻害剤がもたらす神経幹細胞の増殖亢進作用に、神経幹細胞の維持に重要な働きを担っているHes遺伝子の発現が深く関与していることが判明した。また、成体の神経幹細胞に特異的に発現している7種類のG蛋白質共役型受容体(GPCR)を同定した。これらのGPCRは、成体神経幹細胞の人為的な制御法を開発する上で応用できると考えられる。霊長類の神経幹細胞に関して、カニクイザルの中大脳動脈閉塞モデルにおいて、閉塞後海馬および側脳室領域での細胞分裂が有意に亢進することがわかった。また、海馬や嗅球におけるニューロン新生の亢進も確認できた。脊髄を完全に切断したラットの患部にFGF-2を投与することで、損傷後のアポトーシスが抑制され、運動機能の改善が確認できた。
結論
ES細胞の脳内移植に関して、Sox1の発現を利用して分化誘導後に神経系細胞のみを選択する技術を確立し、移植後の腫瘍形成を高率で抑制することに成功した。成体の内在性神経幹細胞の賦活化に関して、NMDA受容体がその増殖の制御に関与していることが判明した。また、神経幹細胞に特異的に発現しているGPCRを同定した。霊長類の神経幹細胞に関して、中大脳動脈閉塞後に海馬および嗅球におけるニューロン新生の亢進を確認した。脊髄損傷ラットにおいて、FGF-2の治癒効果を確認した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200400086B
報告書区分
総合
研究課題名
神経幹細胞を用いた神経変性疾患の治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高坂 新一(国立精神・神経センター・神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 古川 昭栄(岐阜薬科大学 神経分子生物学)
  • 島崎 琢也(慶應義塾大学 医学部)
  • 久恒 辰博(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 高橋 淳(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、神経幹細胞の増殖分化機構に関する基礎的知識を深めるとともに、神経幹細胞を脳内に移植する、あるいは内在性の神経幹細胞を賦活化しニューロンの新生を促進することにより、神経変性疾患で損傷された神経回路網を再構築させることを最終目標とする。この目標を遂行するため、1)移植細胞として有用と考えられるES細胞の分化誘導法に関する研究、2)内在性神経幹細胞の賦活化に関する研究、3)霊長類を用いた神経幹細胞に関する研究、に焦点を当てて研究を推進した。
研究方法
個々の研究方法に関しては、分担研究報告書を別途参照されたい。
結果と考察
ES細胞の分化誘導に関して、レチノイン酸と活性型ソニックヘッジホックを用いて、菱脳から脊髄における領域特異的な運動ニューロンの効率的な分化誘導法を開発した。また、分化誘導後にSox1の発現を利用して神経系細胞のみを選択することで、移植後の腫瘍形成を抑制することに成功した。神経幹細胞の賦活化に関して、NMDA受容体阻害剤がもたらす神経幹細胞の増殖亢進作用に、神経幹細胞の維持に重要な働きを担っているHes遺伝子の発現が深く関与していることが判明した。また、神経幹細胞に特異的に発現しているG蛋白質共役型受容体(GPCR)を用いて、神経幹細胞の増殖や運動性を制御できる薬剤を同定した。霊長類の神経幹細胞に関して、カニクイザルのES細胞から高率にドーパミン産生ニューロンを誘導し、その細胞をパーキンソン病モデルカニクイザルの脳に移植することによって、ドーパミン産生ニューロンの生着と神経症状の改善を得ることに成功した。脊髄を完全に切断したラットの患部にFGF-2を投与することで、損傷後のアポトーシスが抑制され、運動機能の改善が確認できた。
結論
マウスES細胞より、菱脳および脊髄における領域特異的な運動ニューロンを高率に誘導する方法を確立した。また、神経系細胞のみを選択し移植後の腫瘍形成を抑制する方法を開発した。NMDA受容体が神経幹細胞の増殖の制御に関与していることが判明した。神経幹細胞に特異的に発現しているGPCRを用いることで、神経幹細胞の増殖や運動性を制御できる薬剤を開発できることを実証した。カニクイザルES細胞の培養法を確立し、バーキンソンン病モデルカニクイザルに移植した結果、有意な神経症状の改善がみられた。脊髄損傷において、FGF-2が治癒効果を示すことを確認した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-