文献情報
文献番号
200400083A
報告書区分
総括
研究課題名
血管新生と血管保護療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(東京大学大学院医学系研究科(循環器内科))
研究分担者(所属機関)
- 前村 浩二(東京大学大学院医学系研究科(循環器内科))
- 佐田 政隆(東京大学大学院医学系研究科(先端臨床医学開発講座))
- 森下 竜一(大阪大学大学院医学系研究科(遺伝子治療部))
- 室原 豊明(名古屋大学大学院医学系研究科(器官制御内科学))
- 上野 光(産業医科大学医学部(病態医化学))
- 松原 弘明(京都府立医科大学大学院医学研究科(循環器病態制御学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血管新生・再生・保護を制御する血管医学の展開をはかり、これを応用した虚血性心疾患、血行再建術後再狭窄、閉塞性動脈硬化症、心筋症、癌などに対する新しい治療法の開発を目的とする。
研究方法
平成12年から開始している末梢動脈疾患患者への自家骨髄移植療法の臨床治験を継続する。さらに内科的・外科的血行再建術が困難であり狭心症を頻発する重症虚血性心臓病患者に自家骨髄細胞を心筋に移植する。HGF遺伝子導入による治療をラット脳梗塞モデルで検討する。転写因子KLF5機能を解析するために、KLF5遺伝子発現を効率よく行えるsiRNAやKLF5を修飾する薬剤を開発し、血管新生や内膜肥厚に対する作用を検討する。
結果と考察
1)自家骨髄移植による血管再生療法
虚血下肢への自家骨髄移植療法を多施設で実施しの成績はLancetに世界初の循環器病での細胞移植による血管新生治療として掲載され注目された。この結果を受けて、本邦では24大学病院で同じプロトコールで175人の虚血下肢を対象に実施された。175人の統計ではABI、疼痛スケール、歩行距離は移植1月後には有意に改善した。しかし、年単位でABIは減少する傾向があり、新生血管の機能維持が今後の改善点と考えられた。虚血性心臓病への有効性は、自験4例ではいずれも、心機能・胸痛は著明に改善し、安全で有効な再生医療と考えられた。
2) 遺伝子導入ならびに薬物による血管新生の促進療法
脳梗塞モデルラットにおいて、HGF遺伝子投与により記憶の有意な改善が見られた。これは頭部MRIで梗塞巣サイズに差がないことより、機能的なものであることが考えられた。
3) 遺伝子をターゲットにした血管保護療法
転写因子KLF5が様々な臓器リモデリングに関与していることが明らかとなり、それを抑制するsiRNAや薬剤の開発にも成功した。KLF5-siRNAによって平滑筋細胞の形質変換、血管新生が抑制された。in vivoへのsiRNAの新たな遺伝子導入法としてナノ粒子を用いることを検討した。今後、ナノ粒子を最適化することにより、全身投与で作用するナノ粒子の開発が可能になると考えられる。
虚血下肢への自家骨髄移植療法を多施設で実施しの成績はLancetに世界初の循環器病での細胞移植による血管新生治療として掲載され注目された。この結果を受けて、本邦では24大学病院で同じプロトコールで175人の虚血下肢を対象に実施された。175人の統計ではABI、疼痛スケール、歩行距離は移植1月後には有意に改善した。しかし、年単位でABIは減少する傾向があり、新生血管の機能維持が今後の改善点と考えられた。虚血性心臓病への有効性は、自験4例ではいずれも、心機能・胸痛は著明に改善し、安全で有効な再生医療と考えられた。
2) 遺伝子導入ならびに薬物による血管新生の促進療法
脳梗塞モデルラットにおいて、HGF遺伝子投与により記憶の有意な改善が見られた。これは頭部MRIで梗塞巣サイズに差がないことより、機能的なものであることが考えられた。
3) 遺伝子をターゲットにした血管保護療法
転写因子KLF5が様々な臓器リモデリングに関与していることが明らかとなり、それを抑制するsiRNAや薬剤の開発にも成功した。KLF5-siRNAによって平滑筋細胞の形質変換、血管新生が抑制された。in vivoへのsiRNAの新たな遺伝子導入法としてナノ粒子を用いることを検討した。今後、ナノ粒子を最適化することにより、全身投与で作用するナノ粒子の開発が可能になると考えられる。
結論
虚血疾患の新規治療法として血管新生療法、血管保護療法を考案し末梢血管疾患、虚血性心疾患に対して世界に先駆けて臨床治験を開始した。有望な結果を得ており、本研究の成果は、虚血性疾患の患者の生命予後、QOLを改善すると考えられる。また、従来から行われてきた高額医療の代替療法として普及し、医療費の削減に貢献すると期待される。
公開日・更新日
公開日
2005-05-12
更新日
-