組織工学技術を用いた骨・軟骨の効果的効率的再生による臨床研究

文献情報

文献番号
200400079A
報告書区分
総括
研究課題名
組織工学技術を用いた骨・軟骨の効果的効率的再生による臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
上田 実(名古屋大学大学院医学系研究科 細胞情報医学専攻 頭頸部・感覚器外科学講座顎顔面外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 各務秀明(名古屋大学医学部組織工学講座)
  • 山田陽一(名古屋大学医学部附属病院 遺伝子再生医療センター)
  • 鳥居修平(名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 運動形態外科学講座)
  • 本多裕之(名古屋大学大学院工学研究科 生物機能工学専攻 生物プロセス工学)
  • 高井治(名古屋大学理工科学総合研究センター 総合基礎材料工学講座)
  • 小林一清(名古屋大学大学院工学研究科 生物機能工学専攻 生体材料工学)
  • 木全弘治(愛知医科大学 分子医科学研究所)
  • 春日敏宏(名古屋工業大学工学部 材料工学科 ハイブリッド機能機構学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高齢化社会を迎え、種々の臓器不全や障害をもつ患者の増加が見込まれる。国民が高度な医療を享受してゆくためには、組織工学(ティッシュエンジニアリング)を基礎としたヒト組織の再生技術とそのための基盤的技術を早急に確立させ、再生医療用製品生産に関わる産業の発展を促進させることが必要不可欠である。本研究は,骨、軟骨組織の再生に着目し、これら組織工学の手法を用いた骨系統疾患患者の治療方法を確立しようとするものである。本研究の特徴は、基礎的研究から臨床応用まで一貫して検討することにある。
研究方法
 本プロジェクトでは臨床の現場で真に有用な再生治療を提供することを視野において開発を行うこととした。注入型培養骨および培養骨膜シートによる再生骨を組織学的検討に加えて、人工歯根との結合率、骨占有率などにおいても検討を加え、レントゲン、CT等より臨床評価を行った。未分化なMSCを用いてウサギ膝軟骨欠損部に再生実験を行った。
結果と考察
 注入型培養骨の骨再生能力を検討し、組織学的にも注入型培養骨は十分な層板構造を持った成熟した骨再生が確認された。これまでの臨床応用では、全例において明らかな副作用等は認めておらず、現在経過は良好である。一方、培養した骨膜細胞のシートを用いて、歯周疾患による骨吸収を治療する高い骨形成能を有する事を証明した。臨床応用例では、6ヶ月以上の経過観察を行い、ほぼ正常域までの回復を認めた。関節軟骨部の治療には、未分化なMSCを骨軟骨欠損部に移植することで、低侵襲で骨軟骨様組織が作成可能であり、将来臨床的に応用可能と考えられた。
結論
 本研究課題では、自家あるいは同種の移植に代わりうる、新たな骨、軟骨の再生医療の実用化について研究成果が得られた。注入型人工骨および培養骨膜シートを用いた骨再生は、顎顔面外科領域で臨床応用の段階に達している。軟骨についても、ウサギを用いた関節軟骨の再生実験や新規担体の検討などにより、新たな再生治療の可能性が示された。今後は臨床例の増加とともに長期経過についても観察することで、安定した治療につながるものと期待される。また,歯科用インプラント治療の治癒期間短縮や歯周病患者など、幅広い応用を進めることとしている。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200400079B
報告書区分
総合
研究課題名
組織工学技術を用いた骨・軟骨の効果的効率的再生による臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
上田 実(名古屋大学大学院医学系研究科 細胞情報医学専攻 頭頸部・感覚器外科学講座顎顔面外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 各務秀明(名古屋大学医学部組織工学講座)
  • 山田陽一(名古屋大学医学部附属病院 遺伝子再生医療センター)
  • 鳥居修平(名古屋大学大学院医学系研究科 機能構築医学専攻 運動形態外科学講座)
  • 本多裕之(名古屋大学大学院工学研究科 生物機能工学専攻 生物プロセス工学専攻)
  • 高井治(名古屋大学理工科学総合研究センター 総合基礎材料科学講座)
  • 小林一清(名古屋大学大学院工学研究科 生物機能工学専攻生体材料工学講座)
  • 木全弘治(愛知医科大学 分子医科学研究所)
  • 春日敏宏(名古屋工業大学工学部 材料工学科 ハイブリッド機能機構学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 組織工学的手法は、生きた細胞を用いて移植組織が作製できる極めて優れた方法として世界的に注目されている。本研究は,骨、軟骨組織の再生に着目し、これら組織工学の手法を用いた骨系統疾患患者の治療方法を確立しようとするものである。本研究の特徴は、基礎的研究から臨床応用まで一貫して検討することにある。
研究方法
平成15年度は、主に骨延長部への注入型人工骨の応用や、新たな骨、軟骨再生用マトリックスの開発につながる研究などを進めた。また、培養骨膜による骨再生を大型動物疾患モデルにて効果を確認した後,臨床応用を開始した。軟骨再生については,関節軟骨再生の動物実験と新たな担体に関する基礎的検討を行い、臨床応用のための技術的課題の克服を目指した。平成16年度には、注入型人工骨については物理的性状の検討や臨床応用に際しての安全性確保に関する検討を行った。また、新たな骨、軟骨再生用マトリックスの開発につながる研究を進めている。培養骨膜を用いた骨再生については,重度歯周病患者に関する有用性の検討と,凍結保存法確立のための検討を行った。軟骨再生については、MSCを用いた関節軟骨治療の動物実験を行い、治療効果とともに移植細胞の分化を検討した。
結果と考察
注入型人工骨、培養骨膜治療については、本研究期間で臨床的有用性が確認できる段階に達したと考えている。現在は歯科領域への応用であるが,今後これまでの臨床応用の結果がさまざまな分野の骨再生治療につながるものと期待される。軟骨の再生については、MSCを用いることで骨軟骨欠損の修復が可能であること、さらに移植された細胞が軟骨再生の主役となることが明らかとなった。しかしながら,移植細胞の分化制御や一定の組織厚を維持することなど課題も多い。今後細胞分化に関するさらなる研究と新たな担体との組み合わせで、新規の軟骨再生法の創出が期待される。
結論
本研究課題では、自家あるいは同種の移植に代わりうる、新たな骨、軟骨の再生医療の実用化について研究成果が得られた。幹細胞を応用したトランスレーショナルリサーチは良好な結果を得ており、本研究成果から骨再生については実用化が加速されるものと考えられる。一方、臨床経験や動物実験から新たに見いだされた課題もある。これらの課題については基礎的検討を行い、本研究の目的である組織工学の手法を用いた骨系統疾患患者の治療方法の確立につなげたい。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-