皮膚細胞を細胞源とする新規骨・軟骨産生法の開発と臨床応用

文献情報

文献番号
200400076A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚細胞を細胞源とする新規骨・軟骨産生法の開発と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学大学院医学系研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高戸 毅(東京大学大学院医学系研究科)
  • 大河内仁志(国立国際医療センター研究所細胞組織再生医学研究部)
  • 片岡一則(東京大学大学院工学系研究科)
  • 岡野光夫(東京女子医科大学先端生命医科学研究所)
  • 川口 浩(東京大学大学院医学系研究科)
  • 鄭 雄一(東京大学大学院医学系研究科)
  • 星 和人(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、骨・軟骨分化に必要十分なシグナル伝達系を確定し、採取が容易で増殖能も高い皮膚線維芽細胞に骨・軟骨分化を誘導することで、量的限界のある骨髄間葉系幹細胞を用いた従来の方法に代わる新しい骨・軟骨再生治療法を確立することを目的としている。
研究方法
本年度は基礎技術の開発とその基礎検討を中心に、以下の5点に関して検討した。
1.皮膚からの再生用細胞採取・培養法の開発
皮膚及び脂肪組織より多能性幹細胞を分離・培養し、スフェアの形成数・大きさ及び分化マーカーを検討した。
2.骨・軟骨分化に十分なシグナルの解析
骨・軟骨の分化増殖に異常を来たす疾患の原因遺伝子の検索と骨・軟骨の分化増殖に影響を及ぼす遺伝子を網羅的に検討した。
3.ナノミセル人工ウイルスによる遺伝子導入法の確立
導入効率と治療効果の向上に必要な機能を付加したナノミセル型遺伝子ベクターの開発とその基礎検討を行った。
4.細胞シート工学を用いた皮膚線維芽細胞シートの作製
コラーゲンフィルムを使用して皮膚線維芽細胞シートを作製し、増殖・分化・基質産生への影響に関する基礎検討を行った。
5.骨・軟骨欠損小動物モデル(マウス・ラット)の長期自然経過の基礎データ収集
臨界骨・軟骨欠損モデルを作製し、6ヶ月まで放射線学的にその自然経過を追った。
結果と考察
皮膚からの再生用細胞の採取法に関しては、採取条件の適正化がなされ再生用細胞として有用であることが確認された。
 分化シグナルの解析に関してはいくつかのシグナルの組み合わせが骨・軟骨再生に必要かつ十分であることが明らかとなった。
 細胞シート工学の応用及び人工ウィルスの開発に関しては、基礎データの収集がほぼ完了し、次世代の細胞治療・遺伝子治療を担う技術となりうることが強く示唆された。 以上の知見はin vivoでさらに詳細に解析することが必要だと考えられる。in vivoの解析に必要な骨・軟骨欠損モデル小動物の作製に関しては、自然治癒過程を長期的に観察することで最適な臨界欠損モデルを確立できた。本モデルは今後の治療効果の解析に有効なツールとなると考えられた。
結論
16年度は、細胞源(再生用細胞)・分化誘導法(分化シグナル・人工ウィルス)・担体(細胞シート)の3点に関する基礎技術の開発とその基礎検討を行い、骨・軟骨再生に有用である可能性が強く示唆された。今後はその安全性と有効性を主にin vivoにおいて解析する予定である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-24
更新日
-