文献情報
文献番号
200400075A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
- 橋本公二(愛媛大学皮膚科)
- 島崎潤(東京歯科大学眼科)
- 小泉範子(同志社大学再生医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性眼表面疾患に対する培養粘膜上皮幹細胞シート移植術の開発に向けて、さまざま角度から安全性、倫理面に配慮し、かつ臨床的効果が高い治療法の開発を検討した。
研究方法
これまでの培養口腔粘膜上皮移植術の臨床経過を基礎および臨床的側面から評価を行い、その問題点と課題を明らかにした。次に、培養粘膜上皮シートの性状の生物学的向上を目的として、その幹細胞の純化の試みを、遺伝子発現プロファイルによる網羅的な相対的遺伝子発現解析並びにclonal analysisを用いて行った。最後に、粘膜上皮幹細胞シートの開発に向けた培養環境の整備に関する研究を行った。一つには、培養時の安全性や倫理的課題を克服するため、ヒト自己血清を用いた培養粘膜上皮細胞シートの開発を検討した。さらに、基質の安全性を確保するため、滅菌操作可能な羊膜の開発を検討した。
結果と考察
移植した19眼中17眼(89%)で重層化した培養口腔粘膜上皮シートが生着し、異所性自己組織による眼表面再建術に一定のコンセンサスが得られた。問題点として、術後のグラフト内への血管新生や培養上皮シートの生物学的性状が挙げられた。今後、この細胞ソースを口腔粘膜上皮幹細胞に純化した場合の培養上皮シートの性状を詳細に解析し、またグラフト内への血管新生の病態機構を解析していく。遺伝子発現プロファイルによる網羅的解析から、ある特定の増殖因子ファミリーのいくつかが、口腔粘膜上皮において高い増殖能を持つ細胞集団を形成することを発見した。口腔粘膜上皮細胞を用いたclonal analysisでも、holocloneに分類される増殖能の極めて高い細胞群が存在した。自己血清を用いた培養粘膜上皮細胞シートは、ウシ胎児血清を用いたシートと同等の組織学的、細胞生物学的特徴を示した。また、凍結乾燥後、γ線滅菌処理を施行した羊膜は、常温保存可能で従来の羊膜と同等の細胞生物学的特徴を保持していた。培養環境に関して、自己血清あるいは滅菌処理された凍結乾燥羊膜を用いた培養手法が現実的に可能となったため、実際の難治性眼表面疾患患者に応用し、その安全性、生物学的効果、手術成績を評価する予定である。
結論
我々が開発した培養口腔粘膜上皮移植の有効性や問題点を確認した。今後は、培養粘膜上皮幹細胞移植に向け、さらに症例数を増やして、本術式の生物学的効果およびその適応と有効性、合併症について検討を重ねていく。
公開日・更新日
公開日
2005-05-12
更新日
-