移植医療におけるドナー及びレシピエントのQOL向上に関する研究

文献情報

文献番号
200400072A
報告書区分
総括
研究課題名
移植医療におけるドナー及びレシピエントのQOL向上に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 俊一(東海大学医学部基盤診療学系再生医療科学)
研究分担者(所属機関)
  • 土田昌宏(茨城県立こども病院)
  • 秋山秀樹(東京都立駒込病院・血液内科)
  • 一戸辰夫(京都大学大学院医学研究科・血液腫瘍内科)
  • 鎌田 薫(早稲田大学大学院法務研究科)
  • 谷本光音(岡山大学医学部・血液腫瘍呼吸器内科)
  • 小寺良尚(名古屋第一赤十字病院・第4内科)
  • 中尾康夫(札幌北楡病院・麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 同種造血幹細胞移植においては健康な生体ドナーからの造血幹細胞提供が必要となる。研究初年度の16年度は、血縁者間造血幹細胞移植におけるドナーの人権保護と安全性確保に焦点をしぼり、2つのアンケート調査を行い、わが国における造血幹細胞移植医療の実情を把握し、今後のあるべき姿を提言することを目的とした。合わせて非血縁者間骨髄移植におけるドナーの年齢拡大を検証するため、血縁者間骨髄移植でのドナー年齢と有害事象の発生状況を調査することとした。
研究方法
 主任研究者、分担研究者、研究協力者によりアンケート内容を詳細に検討して、主任研究者と分担研究者が所属する施設において過去に実施された血縁者間造血幹細胞移植のドナー経験者に対して予備的調査を実施した。
 また、日本造血細胞移植学会に登録を行っている全国の診療科に対して、血縁者間骨髄ドナーにおける有害事象発生状況に関するアンケート調査を実施した。
結果と考察
 血縁者間ではレシピエント(患者)とドナーが互いを熟知した状況で、HLAが一致している事実が判明してからドナーとなるかどうかを決定していくとため、ドナーの権利が保護されない形でコーディネート過程が進行してしまうことも少なくない様子がアンケートから明らかになった。
 血縁者間骨髄移植における有害事象の発生状況の調査では、2000年以降では生命に影響しうるような重篤な有害事象の発生はなく、重篤ではないが治療を必要とする有害事象の発生が約1%の頻度で発生していたことが判明した。また、ドナーの年齢と有害事象の発生頻度との間には相関は認められなかった。
結論
 健康なドナーからの造血幹細胞提供と採取を行う際には、ドナー自身の権利を十分に保護し、採取の安全性を確保するためのシステムが完備される必要性がある。医療機関における改善努力(複数の医療従事者によるドナーへの説明と選定、移植コーディネーターの導入、ドナー専門外来の開設など)、学会による取り組み(血縁ドナーの悉皆・事前登録、専門医制度と医療機関認定制度の導入など)、行政や医療保険制度、傷害保険による支援、ボランティアなどの社会全体からの支援などについて提言を行った。
 また、非血縁者間骨髄移植においては骨髄バンクのドナー適格条件を守ればドナーの上限年齢を55歳に引き上げても、有害事象が増加する懸念は少ないのではないかと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-01
更新日
-