膵島移植実施のための膵島品質管理と膵島バンク構築の研究

文献情報

文献番号
200400071A
報告書区分
総括
研究課題名
膵島移植実施のための膵島品質管理と膵島バンク構築の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
剣持 敬(独立行政法人国立病院機構千葉東病院(臨床研究センター))
研究分担者(所属機関)
  • 松本 慎一(京都大学医学部付属病院臓器移植治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
34,555,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膵島移植は高い安全性、低侵襲性、再生医療への発展性など多数の利点を有する糖尿病根治療法である。わが国では当院、京都大学を中心に臨床実施が開始された。膵島移植医療を定着させるには提供膵からより多くの膵島を収集することと、過不足無く移植に用いるシステム作りが必要である。本研究では細胞である膵島を皮膚などの組織と同様にバンキングして必要時に必要な膵島を提供することを可能とする膵島バンク構築を目的とする。
研究方法
1.イヌ心停止モデルを用いた効率的膵島分離法の開発:ビーグル犬にて心臓停止モデルを作製し当院の膵島分離法が有効かどうかを、膵島形態の観察、膵島数と純度の測定、膵島機能検査にて判定した。2.イヌ膵島凍結保存の研究:ビーグル犬にて当院の膵島凍結保存法の有効性を凍結解凍後の膵島回復率、膵島機能検査にて判定した。3.臨床膵島分離・凍結保存、膵島移植の研究:脳死または心停止ドナーより提供を受けた膵臓を国立病院機構千葉東病院臨床研究センターCPCにて膵島分離・凍結保存した。高収量・高純度の分離膵島を1型糖尿病患者に移植した。
結果と考察
1.膵島収量・純度は対照群に比較し低下したが、分離膵島形態は良好で良好なインスリン分泌がみられ、当院の膵島分離法は臨床応用可能であると考えられた。2.解凍後の膵島は膵島回復率:>70%、インスリン分泌能も良好で、臨床応用可能であると考えられた。3.当院は現在、関東地域における膵臓摘出、膵島分離・凍結、膵島移植を行っている。平成15年9月国内初の膵島分離・凍結保存を施行し、以後11例の膵島分離を行った。膵島収量は18,693-491,040 IEQ、純度は30-70%であった。分離膵島はすべて機能を有していた。分離例1例を膵島移植に使用した。レシピエントは10代女性。Brittle型糖尿病。局所麻酔下、超音波ガイドに門脈(P8)穿刺し、カテーテルを送り門脈造影を施行。その後膵島浮遊液を門脈内に点滴注入し移植を完了した。免疫抑制法はEdmonton Protocolとした。移植後は合併症無く、低血糖発作の消失、インスリン使用量の減少が得られ、高感度C-peptide値は0.05→0.4ng/mlと上昇した。インスリン離脱は得られなかったが患者QOLの著明な改善がみられた。
結論
当院の膵島分離法、凍結保存法の有効性を大動物モデルにて確認したうえで臨床応用し、臨床膵島移植の遂行が可能であった。今後はさらに厳密な品質管理法につき研究を継続する。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-