AAVベクターを用いた筋ジストロフィーに対する遺伝子治療のpre-clinical study-筋ジス犬骨格筋で認められた免疫応答の克服

文献情報

文献番号
200400061A
報告書区分
総括
研究課題名
AAVベクターを用いた筋ジストロフィーに対する遺伝子治療のpre-clinical study-筋ジス犬骨格筋で認められた免疫応答の克服
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 埜中 征哉(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 鈴木 友子(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 山元 弘(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は,ジストロフィン欠損のマウスモデルに対して,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて,短縮型でありながら,筋ジストロフィーの表現型を改善する能力を持つmicro-dystrophinの遺伝子治療についての研究を行ってきた。本年度は,ジストロフィン欠損の中型モデル動物である筋ジストロフィー犬を用いてAAVベクターの有効性を検討すると共に,サル骨格筋へAAVベクターを用いてLacZ遺伝子を導入し,この方法論がヒトへ応用できるか検討する。
研究方法
1.2日齢から2歳齢までの正常対照犬の前・後肢筋に対し,AAVベクターを導入し, 2,4,8週後に導入筋を採取し,組織学的に導入遺伝子の発現を検討した。さらに,AAVベクター導入の5日前より免疫抑制剤シクロスポリンを毎日経口投与し,遺伝子発現が改善されるかどうか検討した。
2.カニクイザルの左右の上腕筋及び前脛骨筋の計4箇所にAAVベクターを直接注入し,1,2,4,週後に生検により解析する。
結果と考察
1.① AAV2-CMVLacZを用いたイヌ骨格筋への導入では,どの時期に導入した場合でも,導入遺伝子の発現は2週後でのみ認められ,4週,8週後ではほとんど検出されなかった。また,導入2週後で強い細胞浸潤が認められ,8週後まで観察された。
② マウス及びイヌ骨格筋から初代骨格筋培養細胞を樹立し,AAVベクターの感染を行ったが,むしろイヌ培養細胞ではマウスに比べて発現の効率は高い傾向が認められた。
③ AAV2-CMVLacZを導入した骨格筋の浸潤細胞について詳細に検討すると,CD4, CD8陽性細胞が多数観察され,MHC class Iとclass II分子の過剰発現も認められた。そこで,免疫抑制剤の投与を行ったところ,導入遺伝子産物が顕著に発現する場合があった。
2.ベクター導入箇所から筋生検を行ったところ,injection部の軽度の細胞浸潤とβ-galの発現を見出した。
結論
1.犬骨格筋に対するAAVベクターを用いた遺伝子導入を試みたが,強い細胞浸潤を認めた一方で,導入遺伝子の発現が認められなかった。
2.霊長類によるAAVベクターの安全性の検討は,遺伝子治療の開発に重要である。今後も個体数を増やし,効率と安全性に関して検討を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-05-06
更新日
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