腎不全モデル動物を用いたスギヒラタケとの関連が疑われる急性脳症の発症機序解明

文献情報

文献番号
200401401A
報告書区分
総括
研究課題名
腎不全モデル動物を用いたスギヒラタケとの関連が疑われる急性脳症の発症機序解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
下条 文武(新潟大学大学院医歯学総合病院)
研究分担者(所属機関)
  • 成田 一衛(新潟大学医歯学総合研究科)
  • 河内 裕(新潟大学医歯学総合研究科)
  • 清水 不二雄(新潟大学医歯学総合研究科)
  • 高橋 均(新潟大学医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
申請者らの情報収集の結果、本脳症の発症には、前提条件として腎不全状態が必要であり、かつスギヒラタケと呼ばれる食用野生キノコ(一般名:Pleurocybella porrigens)の摂取との関連が疑わしいことが判明した。本研究では、腎不全患者に多発している急性脳症の原因を特定し、その機序を解明することを目的とし、腎不全動物モデルを用いて急性脳症の発症を再現することを試みた。
研究方法
腎不全状態が本脳症発症の要因の一つであると考え、腎不全動物モデル(ラット)にスギヒラタケ、あるいはその抽出物を投与し、脳症が発症するか否かを検討した。
動物実験は、すべて国際基準に基づいて行った。なお新潟大学内の動物実験に関する倫理審査申請を行い、承認された。
結果と考察
マウスに対して、スギヒラタケ水抽出物を腹腔内投与すると、大多数が早期に死亡することは、他の報告(班会議、新聞報道など)と一致していた。しかし、経口投与では死亡せず、しかも腎不全との関連も現在の所不明である。死亡マウスの脳の病理学的評価を、現在行っている。
腎不全ラットを用いた実験では、ラット5/6腎摘出モデルを作成した。この処置により、数周間で血清尿素窒素、血清クレアチニンが上昇し、慢性腎不全状態を再現できた。この5/6腎摘ラットに対して、発症地域から採取したスギヒラタケを経口的に投与した。希に死亡例を認めたが、明らかな神経症状を確認するまでには至っていない。現在、死亡例の脳病理所見の検討と、実験数を増やして再検討している。
(考察)
本症と尿毒症性脳症とは、明らかに異なる病態である。スギヒラタケのどの成分が原因なのか?なぜ今年集中的に多発したのか?なぜ一部の透析患者にのみ発症するのか?など、多くの疑問が残されており、今後の腎不全動物モデルでの解析が謎を解く鍵になると思われる。
結論
本急性脳症は、腎機能障害を有する症例において多発し、スギヒラタケ摂取が原因であり、スギヒラタケを摂取した透析患者の約4%程度に発症した。腎不全に伴う尿毒症性脳症とは明らかに異なり、キノコ中毒としても全例が無い。新しい急性脳症として位置づけるべきである。スギヒラタケのどの成分が直接の原因なのかは現在も不明であり、今後の解析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-25
更新日
-