東北北陸等での急性脳症多発事例にかかる研究

文献情報

文献番号
200401399A
報告書区分
総括
研究課題名
東北北陸等での急性脳症多発事例にかかる研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
柳川 洋(埼玉県立大学)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所)
  • 米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 河岸 洋和(静岡大学農学部)
  • 江口 文陽(高崎健康福祉大学健康福祉学部 )
  • 山本 都(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 大橋 教良(日本中毒情報センター)
  • 下条 文武 (新潟大学)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所)
  • 山本 保博(日本医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 2004年9月より、東北・北陸地方を中心に急性脳症事例が多発し、死亡例も発生している。多くの症例の特徴として、腎機能障害、スギヒラタケの摂食があげられているが、原因は未だ不明である。しかし、診療、予防上の必要性、次年度以降の予防対策、社会的影響を鑑みると、原因の早急の究明は喫緊の課題である。そこで、本研究班においては、東北・北陸等での急性脳症多事例に関し、現在の状況を吟味し、専門家等による学際的議論を通じて、今後の研究の方向性を示すことにより、今後の予防等の推進に寄与することを目的とした。
研究方法
 本研究班においては会議形式の研究班(公開)を開催した。班会議においては、国立感染症研究所感染症情報センターにおいて把握している感染症情報、国立医薬品食品衛生研究所において把握されているスギヒラタケなどのキノコに関する情報、その他各自治体が把握している情報を共有し、それを基に議論を行った。
 議論は、疫学、感染症、中毒学、腎臓病、神経内科、救急医学などの専門的視点より行われた。
 具体的には、現在の調査内容及びそのスキームの確認及び得られた情報の吟味、情報の統合により得られる可能性のある事実についての検討、より一層検討を要する事項の有無などについて確認された。
結果と考察
 国立感染症研究所岡部分担研究者らの疫学調査より、2004年9月、10月の2か月間の新潟、秋田、山形における異常発生は明確であり、多くの患者が発症前2週間にスギヒラタケを喫食していたことが示された。
 スギヒラタケ調査状況については、国立医薬品食品衛生研究所米谷分担研究者よりスギヒラタケの収集状況と研究計画について説明があった。
 総合討論として、各分担研究者の研究結果、知見を基に、疾病概念、原因、スギヒラタケの毒性等について議論された。脳症の発症には、スギヒラタケの関与が疑われたが、症例対照研究などの疫学調査が不十分であり、現段階では因果関係の有無を判断することはできない。
結論
これまでの調査結果から、スギヒラタケの摂取と脳症の発症との因果関係を証明することはできないが、原因究明のためには、今後以下の研究が必要であることが提示された。
 ・スギヒラタケの成分分析
 ・実験動物等を用いたスギヒラタケの毒性分析
 ・患者検体を用いた因果関係の確認研究
 ・症例定義の確立に基づき、症例対照研究などの手法による疫学調査
 ・感染症の可能性についての探索研究
 これらの研究の成果により、急性脳症の原因が解明され、今後の公衆衛生対策に資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-05-09
更新日
-