Webサイトを介しての複数同時自殺の実態と予防に関する研究

文献情報

文献番号
200400034A
報告書区分
総括
研究課題名
Webサイトを介しての複数同時自殺の実態と予防に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
上田 茂(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 正(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 張 賢徳(帝京大学医学部付属溝口病院)
  • 堀口 逸子(順天堂大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2003年2月にインターネットの自殺関連サイトを通じて知り合った若者が複数同時自殺して以降、同様の事例が続発し、「ネット自殺」と呼ばれ、注目を集めている。しかしこれまで、ネット自殺に焦点をあてた研究はほとんど行われていない。本研究は、ネット自殺の予防対策を明らかにしようとするものである。
研究方法
本研究では、自殺しようとする「人」を対象とした精神医学的研究だけでなく、人をとりまく「環境」も含めて多角的に分析を行い、ネット自殺の実態、発生要因を分析した。
結果と考察
精神医学からみた実態では、情報源に限りがあるため結果は限定的であるが、自殺仲間を勧誘する者では境界性人格障害、解離性同一性障害、気分変調性障害、うつ病が、自殺の呼びかけに応じてしまう者ではうつ病、躁うつ病、気分変調性障害がみられた。また、若者のモラトリアム期の閉塞感や先行き不透明感がもとで感じる希死念慮が、自殺系サイトで呼応しあって自殺行動に発展したなど、精神医学的診断がつかない事例もあった。
社会における実態について、新聞報道では、取り扱う記事数や記事あたりの文字数・掲載面などは新聞社によって異なることなどが明らかになった。テレビ報道では、精神疾患とネット自殺を明確に関連づける番組・専門家はほとんどなく、予防策についての言及も乏しく、むしろ自殺した者たちへのバッシングが顕著であった。また大学生を対象としたインタビュー調査を通じて、精神科、精神疾患などに関わる社会的認識の向上を図る必要性、メディアガイドラインを早急に整備する必要性が考えられた。
発生要因と予防に関する多角的分析では、集団意見の極端化を防ぐようWebサイト運営者を指導する必要があること、メディアリテラシー教育を学校や社会で行うとともに専門家に対する教育も必要であること、Webサイトで不特定多数者に自殺を呼びかける行為は基本的に自殺教唆罪を構成しないと解されるが、行為態様によっては、現行法上も「特定の者」に対する自殺教唆罪を構成し得るものがあることなどが指摘された。
結論
今後は本研究で得られた知見をもとに、ネット自殺の予防に向けてその実態と特徴に沿った対策を検討する必要があり、それらの対策を実行することは、ネット自殺に限らず自殺予防対策全体の推進に寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-