免疫学的輸血副作用の実態把握とその対応に関する研究

文献情報

文献番号
200400017A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫学的輸血副作用の実態把握とその対応に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高本 滋(愛知医科大学医学部輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水勝(杏林大学医学部臨床検査医学)
  • 倉田義之(大阪大学医学部附属病院輸血部)
  • 岡崎仁(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所研究開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、我国では未整備の輸血副作用集計について、全国的な報告体制を確立すると共に、輸血副作用の現状を把握し、更に注目される輸血関連急性肺障害(TRALI)などの免疫学的副作用について、実態を把握し、治療並びに予防法を追求することを目的とする。
研究方法
①300床以上の全国1,308施設に対し、輸血副作用の把握状況を中心にアンケート調査を行った。②副作用報告に積極的な4施設について、実態を集計、分析し、日赤の副作用報告と比較した。③TRALIについて日赤への報告例を中心に頻度、検査項目、診断基準などについて検討すると共に、発症機序についてin vitro での検索も加えた。
結果と考察
①アンケートの回収率は約6割。全施設中83.5%が副作用報告体制をしき、内334施設で全て報告する体制をとり、214施設はほぼ100%の報告率と回答した。また、日赤への報告は50%の施設で中等度以上の副作用に限り、全て報告しているのは27%に留まった。②4施設における40,521バッグの輸血により816件(2%)の副作用が発生し、製剤別では RC 21%、FFP 15%、残り64%が PC であった。ウィルス感染、溶血性副作用は全くなく、殆どが免疫学的副作用と判断された。製剤毎の発生頻度は、RC 0.8%、FFP 1.3%に対し、PC は5.1%と明らかに高頻度であった。製剤毎の副作用種類はRCでは発熱、悪寒などの発熱反応53%に対し、FFP、PC では蕁麻疹、発赤、掻痒感などのアレルギー反応が各々95%、80%と大部分を占めた。③1997から2004年の間、日赤に報告されTRALIと判断された約150例の内、検体入手可能な64例と対照103例について抗白血球抗体の有無を測定した。その結果、患者側に差は見られなかったが、供血者側では対照群8%に対し、TRALI群は28%と明らかに高値を示した。一方、発症機序に関する in vitro 検索の結果、肺毛細血管内皮細胞傷害と透過性亢進に対する好中球の関与が示唆された。
結論
輸血副作用の発生頻度は約2%と予想以上に近く高く、厳密な集計のため医療施設での報告体制確立の必要性が如実に示された。ただ、報告体制は予想以上の頻度でしかれており、今後の対応により全国的な報告体制の確立は十分可能と考えられた。TRALIは我国でも増加傾向にあり、供血者の抗白血球抗体が本症の重要な一因であると判断されたが、それだけでは全てを説明しきれず、今後更なる分析、検索が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-07-23
更新日
-