アカネ色素の発がん機構に関する実験的研究

文献情報

文献番号
200400013A
報告書区分
総括
研究課題名
アカネ色素の発がん機構に関する実験的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 雅雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林 真(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 今井田 克己(香川大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既存添加物であるアカネ色素の安全性再評価により、腎尿細管と肝細胞の発がん標的性が判明したが、ヒトに対する安全性を評価するための資料が極めて乏しい。この色素はキノン系色素であるため、発がんにキノンラジカルの生成による酸化的ストレスの関与が考えられる。また、以前行われた多臓器中期発がん性試験では、発がんプロモーション作用は検出されず、投与期間が不十分であった可能性が指摘される。本研究ではアカネ色素による腎発がん性メカニズムに関して、酸化的ストレスの関与とin vivo遺伝毒性の有無について検討し、発がん標的性についても、より長い投与期間を設定して評価研究を行った。
研究方法
酸化的ストレスの関与については、雄ラットにアカネ色素を混餌投与し、投与後3日、 1、 4、 13週目に腎臓の病理検索とPCNA、ニトロチロシンの免疫染色を実施した。in vivo遺伝毒性の検討では、雄Big Blueラットにアカネ色素を28日間混餌投与し、腎臓での導入遺伝子の突然変異性を解析した。発がん標的性の検討では、雄ラットの多臓器発がんモデルを用い、アカネ色素を20週間の予定で混餌投与した。倫理面への配慮として、実験は経口投与が主体であり、深麻酔下で大動脈からの脱血により屠殺したため、動物に与える苦痛は最小限にとどめた。また、動物飼育、管理は、各機関の利用規程に従った。
結果と考察
酸化的ストレスの検討では、アカネ色素による腎腫瘍好発部位である髄質外帯の近位尿細管上皮に、細胞壊死・脱落を伴わずに細胞増殖と散在性の核の大小不同を認めた。また、投与初期からニトロチロシン陽性の近位尿細管が用量に伴い増加したため、一連の変化に一酸化窒素ラジカルとスーパーオキサイドとの反応による酸化的ストレスの関与が示唆され、それらのNOAELは0.1%であった。in vivo遺伝毒性に関しては、投与により腎臓での遺伝子突然変異頻度が増加し、イニシエーション作用が示唆された。発がん性の多臓器標的性に関する検討では、アカネ色素投与開始から8週を経過している。
結論
アカネ色素は、近位尿細管上皮に細胞増殖と核の大小不同を誘発し、それには酸化的ストレスの関与が示唆された。また、弱いながらも腎において遺伝子突然変異誘発性を示した。発がん標的性評価に関しては、投与実験を継続している。

公開日・更新日

公開日
2005-05-11
更新日
-