文献情報
文献番号
200400010A
報告書区分
総括
研究課題名
飲用井戸の合成有機ひ素汚染による健康影響の低減化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 真理(国立保健医療科学院水道工学部)
研究分担者(所属機関)
- 石井 一弘(筑波大学臨床医学系神経内科)
- 石井 賢二((財)東京都老人総合研究所 ポジトロン医学研究施設)
- 柴田 康行(国立環境研究所 化学環境研究領域)
- 瀬戸 康雄(警察庁科学警察研究所法科学第三部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成15年に明らかとなった茨城県神栖町飲用井戸からの合成ひ素化合物、ジフェニルアルシン酸(DPAA)の摂取について、中毒の臨床症候や検査所見を解析することにより、本中毒の特徴を明らかにし、飲用水の衛生対策に資することを目的とし、研究を実施した。
研究方法
井戸水の化学物質汚染による過去の健康障害事例を収集したところ、アクリルアミドモノマー、硝酸塩による事例があった。DPAA中毒事例について、平成16年度末の曝露認定者135名の生活因子、臨床所見、検査所見、生体試料中DPAA濃度をデータベース化し、既述の各症状・症候の出現頻度をA地区(34名)、B地区(67名)で比較した。また、脳血流シンチグラフィの解析、DPAA摂取歴が証明されている48名の成人男女に対して18F-FDGとポジトロンCT (PET)による局所脳ブドウ糖代謝測定を施行し、50名の健常成人と比較した。また、LC/ICP-MS並びにLC-MS/MSを用いたDPAAやフェニルアルソン酸測定方法について検討を行った。
結果と考察
DPAA中毒の症状は、ミオクローヌス、振戦、小脳失調などの小脳-脳幹由来の症状と視覚異常、睡眠障害、記銘力障害などの後頭葉、側頭葉由来の症状であった。これら各症状は入院後(飲水中止後)1-2週間で徐々に軽快し、退院後(飲水開始後)1-2ヶ月で症状が増悪するという特徴を示していた。加えて小児では精神運動発達遅滞(7名中4名)がみられた。汚染濃度はA地区にてDPAA 約15mg/L、B地区ではその1/10程度であり、A地区で各症状の出現が有意に高かった。(χ2検定:p < 0.01)脳血流シンチグラフィの解析では①側頭・後頭部、②小脳、③側頭葉内側部(海馬付近)の血流低下がみられ、急性期の症状責任部位に一致していた。PETの解析では、DPAA摂取中止から平均617日経過し、全例DPAA中毒症状は認められなかったにもかかわらず、多数の症例で小脳、脳幹、側頭葉内側部などに脳ブドウ糖代謝の異常が検出された。
また、DPAA等について、高感度かつ精度、確度が高く分析できる条件を確立した。
また、DPAA等について、高感度かつ精度、確度が高く分析できる条件を確立した。
結論
DPAAは暴露中止・臨床症状消失後も長期間にわたり脳機能に影響が残り、脳機能への影響は年齢依存性があることが示唆された。脳血流シンチグラフィは有機ひ素中毒におけるバイオマーカーになる可能性が考えられた。本研究により、飲用井戸の衛生管理の重要性が示された。
公開日・更新日
公開日
2005-04-22
更新日
-