ヒト胚の研究体制に関する研究

文献情報

文献番号
200400004A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胚の研究体制に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 泰典(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 理(埼玉医科大学産婦人科)
  • 柳田 薫(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室)
  • 齋藤 有紀子(北里大学医学部医学原論研究部)
  • 神里 彩子(科学技術文明研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
総合学術会議は「生殖補助医療研究」に限定して、ヒト胚の研究目的での新たな作成と利用を容認した(「ヒト胚の取り扱いに関する基本的考え方」、2004)。本研究では、その際前提条件とされた「未受精卵を提供する女性の肉体的・精神的負担の考慮」「自由意志によるインフォームド・コンセントの徹底」を含めたヒト胚研究の枠組み構築を目的とした。
研究方法
第一に、最近5年間にわが国で行われた生殖補助医療に関する研究の解析を基礎として、新たに受精胚を作成して行う研究も含めて必要となりうる生殖補助医療研究の検討と、その研究範囲設定を行った。第二に、ヒト胚研究の申請と審査体制について諸外国の現状を調査し、わが国に適合する管理体制を検討した。第三に、配偶子・胚の提供者となりうる当事者に聞き取り調査を行い、さらに提供のための同意書案を作成した。
結果と考察
従来行われた研究のほとんどは提供細胞を直接固定・解析しており、使用受精卵の大部分は不妊治療でえられた廃棄予定胚であった。研究施行機関は大学・研究所に加え、産婦人科診療施設単独で行っているものもみられた。該当研究領域は、1)受精機構、2)胚発生、3)着床機構、4)遺伝的異常の発生機序、5)配偶子・胚保存、などがあり、特に1)、4)、5)は新たに胚を作成する研究が必要となる可能性が高い。
英仏独、北欧諸国を含むほとんどの欧米諸国ではヒト胚研究について法規制を行っており、研究を容認しているすべての国で公的機関による認可体制がとられていた。研究承認の条件としては目的が「不妊治療の向上」であり、提供者の書面による同意を条件としていたが、女性の保護の観点からの特別な法規定や政策は見られなかった。
第三の潜在的提供者の調査では、専門的な研究目的の理解困難、主治医が提供を求めた場合の拒否困難などの懸念と、細分化された選択肢提示の希望など自由意志の尊重を求める意見が見られた。
結論
過去の研究や今後必要とされる研究の検討、海外諸国の現状解析から、わが国独自の規制体制をつくる際に、今後公的管理機関の必要性と、法的規制についての議論が必要である。さらに海外では見られない提供者、特に卵子を提供する女性の保護を重視した、研究計画の情報開示、カウンセリング体制の整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-30
更新日
-