化学テロにおけるサーベイランスに関する研究

文献情報

文献番号
200400003A
報告書区分
総括
研究課題名
化学テロにおけるサーベイランスに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大橋 教良(日本中毒情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 奥村 徹(順天堂大学医学部)
  • 冨岡 譲二(国立国際医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は化学テロ対応の為のサーベイランス体制確立に関する基礎資料を作成する。
研究方法
松本サリン事件、地下鉄サリン事件の検証を行う。最近の化学テロに対する行政や公共機関の取り組み、除染装置や検知器の進歩、不特定多数の群集に対するテロ対策、などに関して国内外の最新文献、報告書を収集し検討する。松本サリン事件、地下鉄サリン事件、および東北北陸で見られた原因不明の脳症多発事例、茨城県神栖町での砒素事件など最近発生した化学物質の関与が想定される健康危機事案を検証し、諸外国の化学テロサーベイランスの現状を調査した。
結果と考察
(1)サリン事件のようなテロも含めた化学物質による比較的急激な健康危機事案、脳症多発事例や砒素中毒事例のような比較的時間経過の長い健康危機事案のいずれの場合も事の発端は、数名程度の患者発生で、通常みられる疾患と極めて紛らわしい状況で発生している。
(2)それらを詳細に検討すると通常とはやや様相の異なる、もしくは通常の状態では説明しかねる面があり、いち早くそれらに気づくことが事件を察知する契機となる。
(3)異常事態を察知もしくは疑った場合には、時間的に余裕のある場合には感染症サーベイランスやすでに存在する健康監視機能である保健所を有効に利用するべきである。一方、急激に大量の患者が発生している場合にはNBCテロ対処現地関連機関連携モデルなどに基づいて消防機関その他との連係、情報交換が重要である。
(4)化学テロの拡大防止と被害軽減のためには、災害拠点病院や救命救急センターでの化学災害対応訓練のさらなる普及とサーベイランス体制の強化が必要である。
(5)サーベイランス体制の強化には、既存の感染症サーベイランス体制の更なる充実のほか、例えば意識障害、呼吸困難、各種皮膚症状など医療機関で察知できる症候別サーベイランス、一般薬の販売状況のサーベイランスなども考えられ、さらに医師会員からの情報収集体制の構築なども重要と思われる。
(6)諸外国では街中の常時検知システムの設置やコンピューターによる化学物質の移動情報の追跡なども行われており、将来的にはわが国でも考慮する必要があるかもしれない。
結論
本研究により化学災害の健康被害を最小限に食い止めるためにサーベイランスの考え方を導入した場合の有効性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-07-05
更新日
-