核・放射線テロ発生時のマスマネジメントに関する研究

文献情報

文献番号
200400002A
報告書区分
総括
研究課題名
核・放射線テロ発生時のマスマネジメントに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山口 芳裕(杏林大学医学部救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 平間敏靖(独立行政法人放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センター被ばく医療部)
  • 越智文雄(自衛隊中央病院リハビリテーション科)
  • 大竹晃行(東京消防庁警防部特殊災害課)
  • 百瀬琢麿(核燃料サイクル開発機構東海事業所放射線安全部線量計測課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射性物質を用いたテロが公衆に対し行われた際の対応体制のあり方を検討する上での根拠となりうる基本資料を作成する。
研究方法
(1)放射性物質を用いたテロが行われた際の現場における対応のうち特にゾーニングと除染についてその方法論と根拠を提示する。
(2)美浜原発事故に対する医療対応に関する現地調査を実施し、現行の緊急被曝医療体制の問題点を検討する。
(3)代表的な原子力発電所の立地国であるフランスにおける核/放射線テロの体制を調査し、わが国における対応を考える際の参考資料とする。
結果と考察
(1)-1 放射性物質を利用するテロリズムの概要と具体例検討:『飛散』型に関しては、想定される線源の強度は、病院で治療用に利用されているγ線源の強度を上回るようなことはないと考えられ、20 m程度の距離を取ればNCRPのturn-around levelを超えない。一方『爆弾』型の場合には、人工密集地域を狙われれば0.01KTの低火力核爆弾でも数万人の死者を出す可能性があり、死者を出す可能性がある範囲は半径200m以上にも及ぶ。
(1)-2 放射性物質と関連したテロ攻撃のアラームサインと超早期対応:発災現場での判断に焦点を当てて、放射性物質に関連したテロ攻撃の際のゾーニング、トリアージ、除染についての考え方を整理した。①爆発を伴うあらゆる事象においてNBCのいずれか、あるいはその組み合わせのハザードが存在する可能性を前提として対応すべきである。②化学物質に対する対応を準備することにより、ハザードが放射性物質を含んでいた時にも実効的な安全をほぼ確保できる。③放射線に関わる既存の種々の規制は、この「実効的な安全」を判断する上で必ずしも適当ではない。
(2)緊急被曝医療も、従来の救急医療体制の枠組みの中でシステムを構築するのが最も実効性が高い。また、救命救急センターの積極的な関与が有効であり、かつその要望が強いことから、その機能の専門強化の必要性を指摘した。
(3)災害医療を展開する上で医療者や病院を保護する法的整備の必要性を指摘した。
結論
本研究では、現実に即した分析を通じて実効性のあるテロ対応体制の構築を目指すという観点から、ゾーニングや除染の判断基準についてかなり思い切ったラインを提示した。今後はこれを、核種ごとにテロに使用される量と可能性の分析から、リアルタイムに確立論的な数値を関係各機関に警告できるシステムに発展させる必要がある。また、実際の訓練や演習を通じてその妥当性について検証を重ねることも重要である。

公開日・更新日

公開日
2005-07-05
更新日
-