危機管理における備蓄の経済学に関わる研究

文献情報

文献番号
200400001A
報告書区分
総括
研究課題名
危機管理における備蓄の経済学に関わる研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
安川 文朗(同志社大学(研究開発推進機構))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、米国同時多発テロを契機に国際的に高まってきたテロの脅威に対する備蓄の問題について、これまでの医学的な観点からの議論だけでなく、経済学的な視点から、今後予想されるバイオテロ対応に必要な人的、物的、社会資本の体制づくりと、そのために必要となる資源(人的、物的、財政的)の量と配分といった危機管理に関わる備蓄政策の基本コンセプトを明らかにするとともに、テロ対策の備蓄の経済学を確立するために必要な分析視点を提案することを目的とする。。
研究方法
本研究は、文献検討と聞き取り調査によって実施された。
文献検討は、欧文について医学的分野をMedlineより、社会科学分野をSSRNより、キーワードに基づいて検索し、研究トピックごとに整理した。また邦文については医学中央雑誌やインターネットを用いて文献収集し、本研究の目的に合致するものを選択した。これと並行して、災害、防衛などテロとの類似性をもつ既存の経済学文献も収集し、概念整理や分析方法上の参考文献とした。
聞き取り調査は、日本の民間企業における技術者、米国の大学における安全保障の経済分析プロジェクトチームの研究者、および地域公衆衛生担当者に対しておこなった。
結果と考察
文献検討の結果、テロ全般における備蓄の経済学に関しては、まだ日米ともに十分な進展がみられない(テロの経済的インパクトについては、Kaufmannら(1997)による炭租菌テロに関する研究で、備蓄の定義と被曝量の特定による費用便益分析の実例が示されている)。日本ではもっぱら医学的対応の問題とワクチン接種の危険性に関する分析が主流となっている。なお米国では、政府の予算配分に関する各州の執行状況とその成果についての報告書が公開されている点が注目される。
聞き取り調査の結果は、文献検討と同様、特にバイオテロの分野における備蓄の経済学の遅れと、日本のバイオテロ対策における制度的な課題が示された。後者は、安全保障に対する日本政府や国民の意識の問題とも深く関わる問題と思われる。
結論
バイオテロの備蓄については、日米ともに、具体的なシナリオにもとづく備蓄と救済の経済的インパクトを推計するに至っていない。しかし米国ではテロ対策予算の執行状況の公開など安全保障の意識がかなり醸成されているが、日本ではテロ対策の予算化が遅れており、市民全体の危機管理意識の醸成が備蓄の経済学の進展に必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-30
更新日
-