包括的社会保障財政予測モデルの構築とそれを用いた医療・年金・介護保険改革の評価研究

文献情報

文献番号
200401382A
報告書区分
総括
研究課題名
包括的社会保障財政予測モデルの構築とそれを用いた医療・年金・介護保険改革の評価研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
社団法人 日本経済研究センター(社団法人日本経済研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 八代尚宏(社団法人日本経済研究センター)
  • 小口登良(専修大学商学部)
  • 八田達夫(国際基督教大学国際関係学科)
  • 鈴木亘(東京学芸大学教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,512,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
年金、医療保険、介護保険の財政予測に関して、誰もが手軽に用いることができ、厚生労働省が行うシミュレーションをほぼ再現できるモデルを作成する。これにより官民が同じ議論の土俵上で社会保障改革に関する政策論議を行うことを可能にし、論議を建設的になることが期待される。それらを総合したモデルによって、現在注目されている総合的社会保障改革論を論じ、改革の全体像が整合的に把握できるようにする。
研究方法
年金、医療、介護についてプロトタイプのモデルを作成した。総合的社会保障改革論について内外の経済学研究をサーベイし、今後の政策論議やモデル作成に資するように論点整理を行った。さらに種々の個票データを利用した改革に対する家計行動の変化の分析や、年金加入者に対する独自のアンケート調査をした。
結果と考察
年金・医療保険・介護保険の各モデルについて、プロトタイプ的なモデルを作成することに成功した。モデルシミュレーションの前提パラメータやシナリオとして用いるために年金加入者意識アンケート調査を実施した結果、年金制度への信頼感や損得勘定、期待する年金改革や反応の大きさ等については年齢層によってかなりの違いが生じていることが判った。社会保障改革に対する家計行動の変化を各種個票データを用いて分析した。国民年金の未加入者に関する分析では、未加入動機として受給・負担の世代間不公平は観察されないが、公的年金の代替物である個人年金については公的年金の収益率の低い若い世代ほど加入しており、この点で家計が年金改革に反応している可能性がある。
結論
中高年齢の年金加入者のアンケート調査からは、自分達の年金給付に関して予想外に利己的であり、特に若年世代の状況をドライに見ていることが判った。これは今後の世代間受給格差の縮小を目指す改革に対して様々な障害となる可能性がある。また必ずしも年金制度に対する理解は深くなく、メディア等によるムード的な年金批判に影響されている部分が大きいことも判った。政策当局による誠実な啓蒙政策は、制度不信の払拭にとって効果的である可能性がある。さらに、若い世代の未加入行動や個人年金加入行動などの分析によって、世代間受給格差への反応は現在のところそれほど大きなものではないことが判った。これらの結果は、今後の社会保障改革において政策的な対応によっては、信頼性を取り戻すことは十分に可能なものであることを示唆するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-19
更新日
-