日本の社会保障制度における社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)効果の研究

文献情報

文献番号
200400144A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の社会保障制度における社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)効果の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 玲子(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
  • 大石 亜希子(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 西村 幸満(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部)
  • 菊地 英明(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、我が国において「社会的排除と包摂(ソーシャル・インクルージョン)」概念を確立し、社会保障制度の企画立案に係る政策評価指標として活用する可能性を探ることにある。研究では①諸外国の経験を資料・文献・データから複眼的に捉えて整理しつつ、②我が国の社会保障制度を「社会的包摂」の観点から検討し、より効果的な施策立案に資するための提言を行う。
研究方法
初年度に当たる本年度は、①欧米における社会的排除―包摂概念の整理と②日本における貧困および社会的排除に関する社会調査レビューを行うとともに、③社会的排除指標を暫定的に定義して既存データからその実用性を検討した。また、④社会的排除に対処する政策の一つとして公的扶助制度の意義をセンの潜在能力理論などの観点から再検討した。さらに、⑤子供期における社会的排除との関連から有子世帯の経済状況を把握した。
結果と考察
阿部(2005)は『社会生活調査』に基づき社会的必需項目による相対的剥奪指標を計測した。その結果、サンプルの19%が剥奪線(平均値)以下の値を示しており、次元別の相対的剥奪指標ではサンプルの17%が2つ以上の次元で平均値を下回っていた。
西村(2005)は、貧困やタウンゼンドの相対的剥奪の概念を整理した上で、日本の貧困および社会的排除に関する先行調査を多分野からレビューした。
菊地(2005)は、政府内に社会的排除室(Social Exclusion Unit)を設置したイギリスにおける論争から社会的排除-包摂概念を検討し、日本への示唆を引き出した。
後藤(2005)は、低所得母子世帯において、特に世間的に贅沢といわれる恐れのある項目に関しては依然充足できていないことを指摘し、これは単なる給付水準を引き上げで解決できる問題ではなく、生活保護の規範意識にかかわる問題であることを指摘した。
大石(2005)は、1990年代以降の子供のいる世帯における所得水準の低迷と所得格差の拡大を「所得再分配調査」から明らかにした。
結論
本年度の研究から社会的排除を探る調査の設計上の問題点がいくつか明らかになった。また、既存データを用いた分析では、一定所得以下の世帯で社会的排除の度合いが高くなることが発見された。さらに、低所得母子世帯、若年子育て世帯などにおいて社会的排除の危険性が高いことが確認された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-