医師供給政策の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200400142A
報告書区分
総括
研究課題名
医師供給政策の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小林 廉毅(東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 大森 正博(お茶の水女子大学生活科学部)
  • 井上 和男(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の医師数は過去30年間で約13万人から約26万人へと倍増した。1998年に公表された厚生省「医師の需給に関する検討会」最終報告書は、医師過剰の影響が2005年頃から顕在化するとしたが、同報告は1996年以前のデータに基づくこと、分析項目も限られていたという制約がある。一方、ここ数年に限ってみても、特定の診療分野やへき地等での医師不足問題は依然として深刻であり、2004年度に導入された臨床研修必修化の医師供給に与える影響も少なくない。そこで本研究では、1970年以降の医大増設等による医師供給政策を総合的に評価し、今後の医師供給政策への提言を行う。
研究方法
国の行う医師調査データの解析、個別の医育機関の卒業生に関する資料の調査、不足している診療分野におけるアンケート調査、文献レビューによる公共経済学的分析等を2年計画で行う。初年度は上記に関する調査の一部と基礎的分析を行った。
結果と考察
今年度の研究結果と考察は以下のとおりである。(1)公共経済学の観点から、医師供給政策を「政府が、国民の厚生を目的として、医師の「量」と「質」について政策的介入を行うこと」と定義した上で、政策介入の是非について検討したところ、医師供給の量及び質に関して、適切な対応策を採らない限り、市場に任せることにより問題が発生する可能性のあることが示唆された。(2)医師数の実証分析から、医師は小人口、僻遠、山間市町村で相対的に不足しているが、自治医科大学卒業医師は義務年限終了後も他大学卒業医師に比べて、そうした医師不足市町村により多く勤務していた。(3)過去30年間の医師の地理的分布について、ギニ係数を指標として系時的に分析したところ、医師の地理的分布はほとんど改善していなかった。(4)医師不足の指摘される診療分野の1つとして、在宅医療分野の診療所医師の動向を調査したところ、年齢の若い医師の方が在宅医療に関わる割合が相対的に高く、今後当該分野の需給関係は改善する可能性が示唆された。医師の研修形態の影響については、スーパーローテーション研修の医師数が未だ非常に少ないため、統計的な差を見いだすことはできなかった。
結論
医師供給政策を評価する上で、医師の地理的及び診療科の分布、並びに医師の属性や研修等に関する客観的資料の分析は有用であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-30
更新日
-