我が国の所得・資産格差の実証分析と社会保障の給付と負担の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200400141A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の所得・資産格差の実証分析と社会保障の給付と負担の在り方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 橘木 俊詔(京都大学 大学院経済学研究科)
  • 森田 陽子(名古屋市立大学 経済学部)
  • 山田 篤裕(慶應義塾大学 済学部)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部)
  • 宮里 尚三(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部)
  • チャールズ ユウジ ホリオカ(大阪大学社会経済研究所)
  • 跡田 直澄(慶應義塾大学商学部)
  • 澤田 康幸(東京大学 大学院経済学研究科)
  • 高木 真吾(北海道大学 大学院経済学研究科)
  • 前川 聡子(関西大学 経済学部)
  • 吉田 有里(甲南女子大学 人間科学部)
  • 時子山 由紀(国際協力銀行 開発金融研究所)
  • 高山 憲之(一橋大学 経済研究所)
  • 大山 昌子(一橋大学 大学院経済学研究科)
  • 小川 浩(関東学園大学 経済学部)
  • 吉田 浩(東北大学大学院 経済学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、単身高齢者の増加、雇用情勢の悪化等も相まって所得格差に関する議論が高まっており、社会保障の在り方についても、その負担に耐えられるか、世代間の給付と負担のバランスが保たれているかといった観点から検討することが求められている。本研究は、「所得再分配調査」等を用いた実証分析に基づき、家計ベースでみた社会保障の給付と負担、所得・資産格差の実態を明らかにし、さらに国際比較も合わせて、所得再分配効果を視点に理論的分析及びシミュレーション分析を行いつつ、持続的成長と所得・資産格差是正との調和を可能とする社会保障の在り方やその条件について考察・研究するものである。
研究方法
「所得再分配調査」「国民生活基礎調査」等を用いた実証分析では、所得格差の諸要因と家計ベースでみた負担と給付の関係を把握する。初年度、「所得再分配調査」の再集計と国際比較を行う。なお、低所得が一時的なものか、あるいは恒常的なものかを区別した家計ベースの所得変動と格差に関する分析を行うため、委託調査とヒアリング調査を実施する。(2)シミュレーション分析では、将来考えられる制度改革の選択肢を提示した上で、その所得再分配効果、及び給付と負担が与える影響について比較考量する。その際、国際比較の観点からルクセンブルグ所得研究(LIS)、OECD等のデータと研究手法を活用する。
結果と考察
「所得再分配調査」(平成14年、11年等)再集計とOECDの研究を合わせると、OECD加盟国の所得格差は拡大傾向にあり、その中で我が国は中位にある。しかしG7諸国に限定すると所得格差が大きく貧困率も相対的に高い。1990年代後半以降、雇用所得の格差が所得格差に影響しており、それは高齢者の所得格差や母子家庭にも現れている。一方、年金給付は所得格差を和らげている。但し、コーホート別に見ると高齢者のほぼ1割程度の者は貯蓄がなく、単独世帯高齢者では貯蓄なしや低貯蓄層が多く、高齢者の不利な姿が見られる。
結論
日本の所得格差がOECD諸国では中位で、格差拡大のテンポも近年緩やかになったことは、社会保障の再分配効果を示している。しかし、高齢者と若年者、傷病者・障害者、母子家庭は低所得になりがちであることが示されている。持続可能な社会保障制度が求められている今日、給付と負担の関係と社会保障給付の規模に配慮しながら、貧困対策を進める必要性が高まっている。所得・資産格差是正のための政策には様々な集団に対する多様な政策が重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-