公的医療保険における自己負担水準が受療行動に与える影響に関する研究

文献情報

文献番号
200400137A
報告書区分
総括
研究課題名
公的医療保険における自己負担水準が受療行動に与える影響に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 康永 秀生(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療サービス価格が受療行動に与える影響を分析した。医療サービスに対する支払意志額(WTP)を計測。次に、2003年4月に被用者保険の本人自己負担2割から3割の上昇がもたらした影響を、独自のアンケート結果から分析した。また、自己負担がさらに4割・5割・10割に上昇した場合の影響をコンジョイント分析により解析した。
研究方法
インターネット上で40-59歳男女から48時間で795件の回答を得た。4つの仮想的シナリオ(風邪・高血圧・網膜剥離・心筋梗塞)を提示し、支払意志額を支払カード法により質問した。2003年4月前後の「外来受診頻度」、「主観的健康感」について質問。「自己負担増加群」および「不変群」間で「外来受診頻度の変化」を比較した。コンジョイント分析では、ケース1(急性症状あり、生命の危険はない)、ケース2(慢性症状あり、生命の危険もある)、ケース3(現時点では無症状だが、疾病の存在と生命の危険が明白)について、医療機関の種別、外来待ち時間、医師のレベル、インフォームド・コンセント、自己負担(3割・4割・5割または10割)を属性に組み入れた全概念法による質問を実施。
結果と考察
支払意志額の平均値は、風邪2,989.9円、高血圧7,698.1円、網膜剥離223,270.4円、心筋梗塞950,440.3円。網膜剥離および心筋梗塞において低所得層のWTPが有意に低かった。「主観的健康感の変化」=0(n=279)のみ抽出した場合、不変群の平均値0.257、増加群は0.043。順序回帰分析の結果でも、不変群は有意に「外来受診頻度の変化」が増加している。コンジョイント分析では、ケース1の最大効用値は3.1390、ケース2は3.2345、ケース3は3.1667。重要度は「自己負担割合」「インフォームド・コンセント」「外来待ち時間」「医師のレベル」「医療機関の種別」の順。ケース1の場合、3割から10割に増加することによる効用値の低下は3.7623。医師レベルの低下よりも、自己負担1割増の方が効用値の低下は顕著であった。
結論
2003年4月に被用者保険本人自己負担割合が2割から3割の増加したことによって、自己負担増加群は不変群と比較して、外来受診頻度の増加が抑制されていた。コンジョイント分析では、他の属性と比較して自己負担増による効用値の低下は著しいため、現行3割からさらに負担増とすることは決して推奨されない。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-