福祉資金貸付制度の効果と課題に関する研究

文献情報

文献番号
200400136A
報告書区分
総括
研究課題名
福祉資金貸付制度の効果と課題に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
青木 紀(北海道大学大学院教育学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田美香(北海道医療大学看護福祉学部)
  • 六波羅詩朗(国際医療福祉大学医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
1,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 近年の不況は子どもたちの進学や卒業にまで影響を及ぼしている。そのことをふまえて、本研究では、いわゆる育英会(学生支援機構)の「奨学金」(貸付)とは別の、生活福祉資金貸付制度と母子及び寡婦福祉資金貸付制度の「修学資金」に焦点をあて、その効果と課題を検証することを目的としている。すなわち、育英会「奨学金」も利用できない貧困・低所得世帯の子どもや若者、あるいは母子世帯の子どもに適用される「福祉資金」が、彼らの教育達成にいかなる役割を果たしているか、このことを明らかにする。
研究方法
 すでに生活福祉資金貸付制度における「修学資金」の分析は進めていたことから、16年度は、母子及び寡婦福祉資金貸付制度の「修学資金」に焦点を当てて大規模なアンケート調査を行った。具体的には、札幌市及び道内2支庁の2052世帯に配布し、634世帯から回答を得た。現在、その結果を分析中である。なおこのほかに、今後は、インタビュー調査の了承を得た世帯に順次訪問調査を行うとともに、生活保護制度や他の奨学金制度との関連を整理する予定である。
結果と考察
 生活福祉資金と母子及び寡婦福祉資金とでは、利用階層には大きな違いはないが、利用理由や利用のあり方はかなり相違があることがわかった。前者では、特に「世帯主の疾病」「失業」などを借用理由としてあげる者が多く、後者は「預貯金の不足」をあげる者が多かった。また、前者は高校段階利用者の比重が相対的に高く、生活保護世帯の利用も多いのが特徴であった。それに対して、後者は、大学段階の利用の比重が相対的に高く、そのことが就職等の安定にも結びついていることも明らかとなた。問題は、ほぼ義務教育化している高校段階の貸付が、必ずしも、その後の若者の雇用の安定に結びついていないことである。
結論
 全体として、福祉資金貸付制度が、不利にある子どもたちの教育の最低限保障・セーフティネットの役割を果たし、母子及び寡婦福祉資金などは高等教育の達成にも結びついている点で評価される。しかし、高校段階のみの利用者は、必ずしも安定した職に結びつかず、その後の「負担の不平等」は解消されるわけではない。また全体として手続きの煩雑さや保証人の確保あるいは職員の対応など、少なくない問題点があることが明らかとなった。これらは根本的な改革と研修の重要性を示唆している。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-