社会福祉行政事務の民間委託(アウトソーシング)に関する研究

文献情報

文献番号
200400134A
報告書区分
総括
研究課題名
社会福祉行政事務の民間委託(アウトソーシング)に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
栗田 仁子(国立保健医療科学院(福祉サービス部))
研究分担者(所属機関)
  • 原田 啓一郎(駒澤大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,119,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は社会福祉行政における行政事務の民間委託について、具体的な事例として生活保護業務を取り上げ、調査・研究を行ったものである。その目的とは、効果的かつ効率的な業務遂行の観点から、生活保護業務の現状認識および業務の一部民間委託の可能性について分析を行い、さらに法理論的な検討も加え、今後の生活保護業務の質の向上のための展望や課題を抽出することである。
研究方法
一つめは研究協力者を交えた研究会の実施である。福祉事務所が担う行政事務の中で民間委託が可能と考えられるものについて検討し、意識調査の内容を決定するとともに、民間委託を行う場合の法令上の問題等について検討を行った。
二つめは生活保護業務とその民間委託に関するケースワーカー(以下CW)への意識調査の実施・分析である。各福祉事務所につき経験2年以上の現業員1名に対し、アンケート調査を実施した。
三つめは法的視点からみた可能性および課題の検討である。生活保護の実施・決定過程を四つの段階に区分し、各段階における業務の法的性格の検討を行った。
次いでCWへの意識調査の結果を踏まえ、各段階における業務の法的性格に照らして、民間委託の可能性がある業務を検討し、同時にその課題を指摘した。
結果と考察
アンケート調査からは、担当ケースの多さによりCWの過重負担が生じている状況が見られ、自立助長の援助が不十分な理由から業務環境、連携体制などの総合的・複合的な取り組みが求められていることが明らかになった。民間の業務委託については、支援の充実を目指しながらも、調査業務やマネジメント業務を委託し、現業員による直接的な相談援助関係の充実を目指すタイプと、相談援助業務を委託し、より専門的なサービスの提供を目指すタイプの二つの志向性が読み取られた。
法的検討については、法28条から考えると、保護開始決定にかかる事務は保護実施主体の責任において行われる業務であると理解することが望ましいと思われる。
結論
CWの過重負担を抑制しつつ、援助業務の充実を図るための方策の一つとして、CWの業務範囲・内容を限定するために一部の業務を委託することが考えられる。そして、委託をするならば実証的な事業評価、効果測定が求められてくるだろう。法的観点から見れば保護の実施・決定過程における業務は専門・個別的な援助が期待されるため、民間に委託できる可能性が高いといえる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-22
更新日
-